さらっと読めて元気が出る、「原書房コージーブックス」のライトミステリー。
今回は、
1.やたらクセの強い元会社経営者のアガサが、ロンドンを離れて自然の中で隠居生活を送るはずが殺人事件に巻き込まれる、「英国ちいさな村の謎」シリーズ
2.祖父母から引き継いだお店をチーズとワインの専門店にしたリニューアルパーティーで、嫌われ者の地主の殺人事件が起きてしまう、オハイオ在住30代フランス系アメリカ人女性が主人公の「チーズ専門店」シリーズ
3.ホワイトハウス厨房のNo.2シェフを務める小柄な若い料理人女性が、国際的な暗殺事件に巻き込まれる、「大統領の料理人」シリーズ
という、タイプの違う3作品をご紹介します。
思わず手に取りたくなる、かわいい表紙も特徴のレーベルです。
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1.英国ちいさな村の謎シリーズ ①「アガサ・レーズンの困った料理」M・C・ビートン:クセつよ50代元経営者が風光明媚な田舎で隠居生活・ドラマ化も
「アガサ・レーズンの困った料理」あらすじ
イギリスの労働者階級生まれで、(実質的には)独身ひとり暮らし、子どもはいません。
不幸な子ども時代と結婚生活を経験しながらも、ひとりでがむしゃらに働きロンドンにあるPR会社の経営者という地位に上り詰めたアガサは、会社を売却し、長年の夢だったコッツウォルズでの自然に囲まれた田舎暮らしを始めました。
ところが、広報の仕事や他人と闘うことは得意でも、一般的な対人スキルや家事能力のない彼女は、村で思うような人間関係を築けません。
ある日、村で恒例のキッシュ・コンテストが開催されることを知ったアガサは、優勝して近所の人たちに一目置かれようと、ロンドンの人気店のキッシュを買ってきて、自分の手作りとして出品します。
コンテストのあと、そのキッシュの残りを食べた審査員が急死して、アガサは毒殺を疑われ――。
1992年発表のロングセラーシリーズ第1作。
「アガサ・レーズンの困った料理」感想・シリーズ続編
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2.チーズ専門店シリーズ ①「名探偵のキッシュをひとつ」エイヴリー・エイムズ:読むと今すぐ!チーズとワインが欲しくなる
「名探偵のキッシュをひとつ」あらすじ
幼い頃に両親を亡くし、元フランス移民の父方の祖父母に育てられたシャーロットは、オハイオの小さな町に住む30代女性。
香りだけでチーズの種類がわかる彼女は、祖父母が長年営んできたチーズ専門店を継ぎ、共同経営者でソムリエのいとこのマシューと共に、店をチーズとワインの専門店にリニューアルします。
新装開店パーティーには町のみんなが集まり、チーズもワインも大好評でしたが、女好きで意地の悪い地主が刺殺される事件が起こります。
しかも、死体のそばには手を血で染めた祖母の姿が――。
2010年発表。
「名探偵のキッシュをひとつ」感想・シリーズ続編
キッシュつながりでもう一作、
といっても、タイトルに反して、こちらの作品ではキッシュ自体はそれほど出てきません。
主人公が営むのは、キッシュのお店ではなく、チーズとチーズを使った料理(キッシュはこちらに該当)のお店なんですよね。
メジャーなものも珍しいものも含む様々なチーズと、それぞれに合うワインが、これでもかというほど登場。
著者のチーズ愛・ワイン愛が感染するのか、読んでいると、チーズとワインが無性に食べたく・飲みたくなります!
しかも、どちらも1種類では済まなそう 笑
主人公のシャーロットは、祖父母から継いだお店をいとこのマシューと共にリニューアルして経営するだけでなく、離婚したばかりの彼の幼い双子の娘の世話もしながら、殺人の容疑者となってしまった祖母のために事件の謎を追うがんばり屋さん。
このマシュー、仕事はできてもシングルファーザーの自覚に欠けているというか、一時期ふわふわしてて、読んでいてイラっとするんですよねえ。
家事育児をひとりで抱え込みすぎず人に助けてもらうのはいいことだけど、理由もいわず感謝も伝えずに、いとこに小学生の娘たちの世話をほぼ丸投げはありえん(怒)
ただしシャーロットも、仕事だけでなく恋や友情にもエネルギーを注ぎます。
悲しい過去のあるシャーロットですが、やっと気になる相手ができたところ。
恋の相手はミステリアスで、ラストにはめちゃくちゃ続きが気になる強烈な引きがあります。
小さなコミュニティで過去や現在のいくつもの恋愛が渦巻くタイプのお話が好きな方におすすめの作品。
若い頃フランスから移住してきた仲良し祖父母、特に、町長の仕事に加えて、劇場の経営や舞台の演出もこなす、パワフルな元ダンサーのおばあちゃんのキャラクターが魅力的です。
ミステリーとしては、推理はほぼなく、怪しいと思った人を調べてまわるタイプの作品。
原題は“The Long Quiche Goodbye”
(チャンドラーのオマージュでしょうか 笑)
著者のエイヴリー・エイムズはカリフォルニア生まれの元女優(作中出てくる「ジェシカおばさんの事件簿」シリーズにも出演! 笑)で、本作が長編デビュー作。
2010年度のアガサ賞処女長編賞を受賞している作品です。
(※アガサ賞:「伝統的なミステリ」愛読者の大会であるマリス・ドメスティック主宰の賞)
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3.大統領の料理人シリーズ ①「厨房のちいさな名探偵」ジュリー・ハイジ―:プロの暗殺者も出てくる冒険作品!
「厨房のちいさな名探偵」あらすじ
「厨房のちいさな名探偵」感想・シリーズ続編
コージーブックスの作品としては異色の、ホワイトハウスを主な舞台に、主人公が暗殺者から命を狙われるという冒険もの。
クリスティーのトミーとタペンスシリーズにも似た、ちょっと緩いけれどハラハラドキドキが楽しめる作品でした。
\トミーとタペンスシリーズはこちら/
主人公のオリーは、これまで紹介してきた作品のヒロインたちと比べれば、そこまで無鉄砲というわけでもないのですが、正義感と職場の特殊さのせいか、ふとしたことから仕事もプライベートも大ピンチに。
ホワイトハウス厨房の料理人という、オリーの仕事内容が興味深く、贅沢な食材を使いまくった献立にもうっとり。
ライバルが活躍するテレビ業界の、なにかと強引な仕事の進め方にも説得力がありました 笑
周囲の人たちのキャラが印象的。
続編でのオリーの恋の行方もたいへん気になるところです。
(トムって、悪いやつじゃないんだけど……)
著者のジュリー・ハイジーはシカゴ出身、SF作品で作家デビュー。
本作は2009年度アンソニー賞・バリー賞・ラヴィー賞受賞。
現在第8巻『ほろ苦デザートの大騒動』まで邦訳されている人気シリーズです。
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