アガサ・レーズン、チーズ専門店、大統領の料理人:原書房コージーブックス作品紹介2 ~恋と仕事と美味と謎~

 ページ内のリンクには商品プロモーションが含まれています
 
 恋に仕事に頑張るヒロインと、美味しいもの+テンポのいい謎解き。
 
さらっと読めて元気が出る、「原書房コージーブックス」のライトミステリー

 今回は、

1.やたらクセの強い元会社経営者のアガサが、ロンドンを離れて自然の中で隠居生活を送るはずが殺人事件に巻き込まれる、「英国ちいさな村の謎」シリーズ

2.祖父母から引き継いだお店をチーズとワインの専門店にしたリニューアルパーティーで、嫌われ者の地主の殺人事件が起きてしまう、オハイオ在住30代フランス系アメリカ人女性が主人公の「チーズ専門店」シリーズ

3.ホワイトハウス厨房のNo.2シェフを務める小柄な若い料理人女性が、国際的な暗殺事件に巻き込まれる、「大統領の料理人」シリーズ

 という、タイプの違う3作品をご紹介します。

 思わず手に取りたくなる、かわいい表紙も特徴のレーベルです。
 

コージーブックス2アイキャッチ

 

      \読みたい項目へGo ♪/

■目次■
 

1.英国ちいさな村の謎シリーズ ①「アガサ・レーズンの困った料理」M・C・ビートン:クセつよ50代元経営者が風光明媚な田舎で隠居生活・ドラマ化も

「アガサ・レーズンの困った料理」あらすじ

 アガサ・レーズンは53歳、茶色い髪にがっちりした体つきで「色気ゼロ」
 イギリスの労働者階級生まれで、(実質的には)独身ひとり暮らし、子どもはいません。

 不幸な子ども時代と結婚生活を経験しながらも、ひとりでがむしゃらに働きロンドンにあるPR会社の経営者という地位に上り詰めたアガサは、会社を売却し、長年の夢だったコッツウォルズでの自然に囲まれた田舎暮らしを始めました。

 ところが、広報の仕事や他人と闘うことは得意でも、一般的な対人スキルや家事能力のない彼女は、村で思うような人間関係を築けません。

 ある日、村で恒例のキッシュ・コンテストが開催されることを知ったアガサは、優勝して近所の人たちに一目置かれようと、ロンドンの人気店のキッシュを買ってきて、自分の手作りとして出品します。

 コンテストのあと、そのキッシュの残りを食べた審査員が急死して、アガサは毒殺を疑われ――。

 1992年発表のロングセラーシリーズ第1作。

「アガサ・レーズンの困った料理」感想・シリーズ続編

 本作の一番の魅力は、主人公アガサの破天荒なキャラクター。
 
 いくら辛い過去があるとはいえ、人の止めたタクシーや入りかけた駐車場を白昼堂々(笑)横取りするなど、大きいものから小さいものまで、息をするようにルール違反・マナー違反をやりまくる彼女に、
「この主人公、共感できねえ!」
 と思いながら読み始めた方は多いのではないでしょうか 笑
 
(わたしはそうでした)
 
 その最たるものが、物語が始まって早々に行われる、買ってきたキッシュを自作としてコンテストに出品する件ですよね……(げんなり)
 
 あと、終盤のチョコレートケーキのくだりには、大人げなくキレましたよわたし! 
 アガサ、そういうことしちゃダメ! 人の厚意を無にするんじゃない!
 
 とはいえ、どこか憎めないアガサを、読者はハラハラしながらも、いつのまにやら応援することになるわけです 笑
 作者の腕ですよね~ 笑
 
 前回記事で紹介したコージーブックスの作品とは違って、舞台はイギリス、文章は落ち着いたユーモアのある三人称です。
(アガサのとんでもない言動にも地の文でちゃんと突っ込みが入るので、安心して読めます 笑)
 
 \前回記事はこちら/

 
 ミステリーとしては、主人公が手当たり次第に関係者に会ううちに、なんとなく真相に近づくというパターン。
 中年太りが気になる53歳ながら、並外れた行動力で素人探偵にいそしむアガサ
 終盤には推理パートもあります。
 
 なんだかんだで引っ張られる事件の謎や、果たしてアガサはケチのついた田舎暮らしを捨ててロンドンに戻るのかどうか、などなど、さすがベテラン人気作家の作品、最後まで読者を離しません。
 
 原題は“Agatha Raisin and the Quiche of Death”
 
 著者M・C・ビートンは、1936年イギリス・スコットランドのグラスゴー生まれ。
 結婚して渡米し、マリオン・チェズニー名義で作家デビューし、100冊以上のロマンス小説を出版。
 M・C・ビートン名義では、1985年に発表した「ヘイミッシュ・マクベス巡査」というミステリーシリーズがBBCスコットランドでドラマ化され、高視聴率を叩きだします。
 
 その後、イギリスのコッツウォルズに移り住み、同地域を舞台に、このアガサ・レーズンシリーズをスタート
 本シリーズはイギリスでラジオドラマ化(2011年)やテレビドラマ化(2014年~)もされ、日本では現在第22巻まで出版されている人気作品です。
 

 \シリーズ続編はこちら/

 

 \最新作はこちら/

 

2.チーズ専門店シリーズ ①「名探偵のキッシュをひとつ」エイヴリー・エイムズ:読むと今すぐ!チーズとワインが欲しくなる

「名探偵のキッシュをひとつ」あらすじ

 幼い頃に両親を亡くし、元フランス移民の父方の祖父母に育てられたシャーロットは、オハイオの小さな町に住む30代女性。

 

 香りだけでチーズの種類がわかる彼女は、祖父母が長年営んできたチーズ専門店を継ぎ、共同経営者でソムリエのいとこのマシューと共に、店をチーズとワインの専門店にリニューアルします。

 

 新装開店パーティーには町のみんなが集まり、チーズもワインも大好評でしたが、女好きで意地の悪い地主が刺殺される事件が起こります。

 しかも、死体のそばには手を血で染めた祖母の姿が――。

 2010年発表

「名探偵のキッシュをひとつ」感想・シリーズ続編

 キッシュつながりでもう一作、

 といっても、タイトルに反して、こちらの作品ではキッシュ自体はそれほど出てきません。

 

 主人公が営むのは、キッシュのお店ではなく、チーズとチーズを使った料理(キッシュはこちらに該当)のお店なんですよね。

 

 メジャーなものも珍しいものも含む様々なチーズと、それぞれに合うワインが、これでもかというほど登場。

 

 著者のチーズ愛・ワイン愛が感染するのか、読んでいると、チーズとワインが無性に食べたく・飲みたくなります!

 しかも、どちらも1種類では済まなそう 笑

 

 主人公のシャーロットは、祖父母から継いだお店をいとこのマシューと共にリニューアルして経営するだけでなく、離婚したばかりの彼の幼い双子の娘の世話もしながら、殺人の容疑者となってしまった祖母のために事件の謎を追うがんばり屋さん。

 

 このマシュー、仕事はできてもシングルファーザーの自覚に欠けているというか、一時期ふわふわしてて、読んでいてイラっとするんですよねえ。

 家事育児をひとりで抱え込みすぎず人に助けてもらうのはいいことだけど、理由もいわず感謝も伝えずに、いとこに小学生の娘たちの世話をほぼ丸投げはありえん(怒)

 

 ただしシャーロットも、仕事だけでなく恋や友情にもエネルギーを注ぎます。

 

 悲しい過去のあるシャーロットですが、やっと気になる相手ができたところ。

 恋の相手はミステリアスで、ラストにはめちゃくちゃ続きが気になる強烈な引きがあります。

 

 小さなコミュニティで過去や現在のいくつもの恋愛が渦巻くタイプのお話が好きな方におすすめの作品

 

 若い頃フランスから移住してきた仲良し祖父母、特に、町長の仕事に加えて、劇場の経営や舞台の演出もこなす、パワフルな元ダンサーのおばあちゃんのキャラクターが魅力的です。

 

 ミステリーとしては、推理はほぼなく、怪しいと思った人を調べてまわるタイプの作品。

 

 原題は“The Long Quiche Goodbye”

(チャンドラーのオマージュでしょうか 笑)

 

 著者エイヴリー・エイムズはカリフォルニア生まれの元女優(作中出てくる「ジェシカおばさんの事件簿」シリーズにも出演! 笑)で、本作が長編デビュー作。

 

 2010年度のアガサ賞処女長編賞を受賞している作品です。

(※アガサ賞:「伝統的なミステリ」愛読者の大会であるマリス・ドメスティック主宰の賞)

 

 \シリーズ続編はこちら/

 

 

3.大統領の料理人シリーズ ①「厨房のちいさな名探偵」ジュリー・ハイジ―:プロの暗殺者も出てくる冒険作品!

「厨房のちいさな名探偵」あらすじ

 主人公は、ワシントンDCにあるホワイトハウスの厨房で、キャンベル大統領のために働く若きアシスタント・シェフ、オリーことオリヴィア
 
 厨房を束ねるエグゼクティブ・シェフのヘンリーは、およそ2週間後に引退予定。
 同僚たちからは彼の後継者とみなされているオリーですが、対立候補でタレント活動をしているローレルが気になります。
 
 ある日、ホワイトハウスに侵入した謎の男と遭遇したオリーは、持っていたヘンリーの退職祝いのフライパンで彼を殴ってしまいますが、それをきっかけに国際的な暗殺計画に巻き込まれることに。
 
 周囲に内緒でつきあっているシークレット・サービスのトムとの関係も、こじれてしまいます。
 
 さらには、組織改革によって厄介な管理職に職場をひっかき回されるはめになった上、たった1週間で重要な晩餐会の準備をすることになって――。
 
 2008年発表

「厨房のちいさな名探偵」感想・シリーズ続編

 コージーブックスの作品としては異色の、ホワイトハウスを主な舞台に、主人公が暗殺者から命を狙われるという冒険もの

 

 クリスティーのトミーとタペンスシリーズにも似た、ちょっと緩いけれどハラハラドキドキが楽しめる作品でした。

 

 \トミーとタペンスシリーズはこちら/

 

 主人公のオリーは、これまで紹介してきた作品のヒロインたちと比べれば、そこまで無鉄砲というわけでもないのですが、正義感と職場の特殊さのせいか、ふとしたことから仕事もプライベートも大ピンチに

 

 ホワイトハウス厨房の料理人という、オリーの仕事内容が興味深く、贅沢な食材を使いまくった献立にもうっとり。

 

 ライバルが活躍するテレビ業界の、なにかと強引な仕事の進め方にも説得力がありました 笑

 

 周囲の人たちのキャラが印象的。

 続編でのオリーの恋の行方もたいへん気になるところです

(トムって、悪いやつじゃないんだけど……)

 

 著者ジュリー・ハイジーはシカゴ出身、SF作品で作家デビュー。

 

 本作は2009年度アンソニー賞・バリー賞・ラヴィー賞受賞。

 現在第8巻『ほろ苦デザートの大騒動』まで邦訳されている人気シリーズです。

 

 \シリーズ続編はこちら/

 

 \最新作はこちら/

 
 
 
 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 みなさま、どうぞ楽しい物語体験を ♪
 
 
 
【 作家別記事一覧 】を見るなら
スマホは記事下・PCは記事横の
⇒「カテゴリー」
⇒各項目の右端にある
小さい矢印「v」をタップ!