「黄色いアイリス」アガサ・クリスティー:ポワロもミス・マープルもパーカー・パインも!オールスター短編集

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4年前に急死した妻のアイリスの追悼パーティー。
飛び入りしたポワロの目の前で、事件当日と同じ状況が再現され――。

ポワロミス・マープルパーカー・パインの活躍する8編と、ノン・シリーズ1編を収録した、キレのいい作品揃いの短編集。
1980年刊行。
 
 
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■目次■
 

黄色いアイリスアイキャッチ

 

※ミステリー短編集に興味のある方には、こちらもおすすめ

短編集「黄色いアイリス」とは

 今回ご紹介する『黄色いアイリス』とは、ハヤカワで編纂された「クリスティー短編集」の第10巻。

 

 英題“The Regatta Mystery and Other Stories”の通り、

 

  • 1939年出版の“The Regatta Mystery”から短編『夢』を除き、
  • 1948年出版の“The Witness for the Prosecution and other stories”から短編『二度目のゴング』を加えた短編集です。

 

 収録作品は、

  • ポワロもの5編
  • パーカー・パインもの2編
  • ミス・マープルもの1編
  • ノン・シリーズの幻想小説1編

 の計9編。

 

 ポワロミス・マープルに加え、

「悩みがおありですか? パーカー・パイン氏に相談なさい」(p127)

 の新聞広告で有名な、パーカー・パインも登場します。

 

 ポワロの秘書ミス・レモンや、とらじの推しヘイスティングズも、ちょっとだけ出ますよー。

 

 

 \外された短編『夢』はこちらに収録/

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短編集「黄色いアイリス」全9話あらすじと感想

第1話「レガッタ・デーの事件」(“The Regatta Mystery”):ダイヤモンドを探せ!

 自前のヨットでダートマスについたアイザック・ポインツは、レガッタを観戦し、市(いち)を回ったあと、7人の旅行仲間と共にレストランに向かいました。

 コース料理の途中で、アメリカ人の少女イーヴが、ポインツが肌身離さず身につけている3万ポンドのダイヤモンド「明けの明星」を盗んでみせると賭けをもちかけます。

 ところがその後、思わぬアクシデントで、ダイヤモンドは部屋の中から消えてしまい――。

 

 短編にしか登場しない、不幸のコンサルタントことパーカー・パインが、安楽椅子探偵ぶりを発揮する作品。

 

 映像化したら映えそうな鮮やかなトリックで、登場人物も印象的でした。

 

 バラエティに富んだこの短編集の中でも、個人的には一番好きな作品です。

第2話「バグダッドの大櫃(おおびつ)の謎」(“The Mystery of the Bagdad Chest”):
陰湿だったりアレだったりな真相……

 友人のクレイトン氏を殺して死体を部屋の大櫃(おおびつ)に押し込み、そのまま部屋でパーティーを開いていたとされるリッチ少佐。

 新聞で事件の記事を読んでいたポワロとヘイスティングズに、リッチ少佐と不倫の噂のあるクレイトン夫人が、少佐の冤罪を晴らすよう依頼します。

 

 再読ですが、トリックがあまりに印象的で覚えていました 笑

 ちゃんとヒントも出されてるんですよねー。

 

 ただ、そもそもの話、

 なんであれをやろうと思ったんだ、いい大人が 笑

第3話「あなたの庭はどんな庭?」(“How Does Your Garden Grow ?”):見落としそうな伏線

 年配女性から調査依頼の手紙を受け取ったポワロは、その後女性が急死したと知り、彼女が姪夫婦や看護師と暮らしていた美しい庭のある家を訪れます。

 死因は毒で、状況から看護師に容疑がかかりますが――。

 

 イギリスの生活習慣というか身近な文化を知らないと、真相に辿りつくのは難しいかも。

第4話「ポリェンサ海岸の事件」(“Problem at Pollensa Bay”):どの国でもありそうなお話

 スペイン旅行中のパーカー・パイン氏は、同じイギリス人旅行客の20代半ばの息子と母親と知り合います。

 旅先で息子が恋に落ちた相手が気に入らない母親は、ふたりを別れされるようにパーカー・パイン氏に頼みますが――。 

 

 ミステリーではなく、痛快な人間ドラマ

 ラストでのある人物の言動が、イラっとするけど非常にリアルです 笑

第5話「黄色いアイリス」(“Yellow Iris”):
追悼パーティーで2度目の悲劇が

 ハスキーな声の女性からの電話で、レストラン「白鳥の園」の黄色いアイリスを飾ったテーブルに呼び出されたポワロ。

 その席を予約していたバートンに誘われて、ポワロは4年前に急死した彼の妻・アイリスをしのぶパーティーに飛び入り参加することになります。

 テーブルを囲むポワロ以外の5人と、4年前の今夜、パーティーを楽しんでいたアイリスは、宴のさなかにシャンパンに入った青酸カリで亡くなったのでした。

 やがてバートンが、妻はこの場にいる5人の内の誰かに殺されたのだと言いだし――。

 

 謎の電話でまんまと呼び出される、人のいいポワロが見られる作品です 笑

 

 構成やトリックは面白いけど、ちょっと駆け足だったな。

 と思ったら、後年、この作品をもとにした長編が書かれていました。

(詳しくはあとの項で)

第6話「ミス・マープルの思い出話」(“Miss Marple Tells a Story”):密室を破れ

 甥のレイモンドと(彼のガールフレンドまたは妻の)ジョーンに語る、ミス・マープルの思い出話。

 ある晩ミス・マープルは、法律家のペサリックから、窮地に陥っているローズという男性を紹介されました。

 夫婦の他に誰もいなかったとされるホテルの部屋で、妻を殺したという容疑のかかっているローズ氏の話を聞いて、ミス・マープルは――。

 

 ミス・マープルが安楽椅子探偵ぶりを発揮します。

 

 少しややこしい設定なので、ホテルの夫婦の続き部屋と目撃者たちの位置関係がわかる図がほしいところ。

 

 なんだかブラウン神父作品を思い出すトリックでした。

第7話「仄暗い鏡の中に」(“In a Glass Darkly”):幻想小説

 23歳の「私」は、夏の休暇に親友ニールの実家に招かれました。

 歴史ある屋敷の中で、「私」がなにげなく見ていた鏡の中に、突然、男性が寝室で若い女性の首を絞めている光景が映ります。

 驚いて振り向いても、背後に鏡に映っていた寝室はありません。

 幻覚だったのだろうと思う「私」でしたが、その直後、鏡で見た顔とそっくりの女性と、その婚約者に出会い――。
 

 幻想的な作品が好きな方におすすめ

 ミステリーっぽい仕掛けは面白いけれど、ちょっと都合がいいような気はしますね 笑

第8話「船上の怪事件」(“Problem at Sea”):
騙されて楽しい ♪

 客船で旅行中のポワロは、とある客についてフォーブズ将軍とうわさ話をしていたミス・ヘンダーソンと知り合います。

 ふたりが話していたのは、夫婦で旅行中のクラパートン大佐の経歴と、裕福な妻とのなれそめについて。

 長身で魅力的な大佐は、若作りが目立つ年上の妻からじゃけんにされても顔色ひとつ変えず、おとなしく彼女に従っていました。

 やがて船がエジプトに到着し、若い女性客から一緒に上陸しようと誘われたクラパートンは、妻を誘いに行きますが――。

 

 クリスティー得意の、優雅な船の旅で起きる殺人事件

 これまた得意の、傲慢な年上妻と献身的な年下夫の組合せです。

 

 あっさり真相がわかりそうで意外とわからない、目くらましに騙されるのが楽しい作品。

第9/最終話「二度目のゴング」(“The Second Gong”):
密室好きさんにおすすめ

 裕福なリッチャム・ロシュ老人の屋敷に滞在中のジョーンは、晩餐の時刻を告げる2度目のゴングを聞いたと思い、慌てて食堂に向かっていました。

 晩餐に遅れるとこだわりの強いリッチャム・ロシュ氏の逆鱗に触れるため、焦っていたジョーンですが、廊下で会った老人の甥のハリーや執事によれば、ゴングはまだ1度しか鳴らされていませんでした。

 そのとき、どこからか銃声のような音が聞こえます。

 その後、2度目のゴングが鳴らされますが、肝心の老人が現れません。
 老人の秘書のジョフリー、養女のダイアナ、家のことは執事任せの妻や、老人の友だちバーリングが不思議がる中、新たな客ポワロが屋敷に到着します。

 リッチャム・ロシュ老人がいるはずの書斎には、がかかっていて――。

 

 みんな大好き、へんくつ老人の遺産相続問題被相続人の恋愛が絡むお話。

 映像化したら映えそうな、華やかな作品です。

 邸内の見取り図があるとわかりやすかったんだけどなー。

 

 なお、本作をもとに、のちに中編『死人の鏡』が書かれたそうです。

短編集「黄色いアイリス」こんな方におすすめ

  • キレのいい短編を読みたい方

 

  • ポワロもミス・マープルもパーカー・パインも、クリスティーの有名な探偵の作品をまとめて読みたいという欲張り読者さん

 

  • クリスティーのタイプの違う短編を読み比べたい方

 

  • クリスティーの人気長編『忘れえぬ死』の原案となった短編(『黄色いアイリス』)を読みたい方

 

  • 同じく人気中編『死人の鏡』の原案となった短編(『第2のゴング』)を読みたい方

次回予告:短編「黄色いアイリス」が長編に!「忘れえぬ死」

 というわけで次回は、

 今回ご紹介した第5話(表題作)『黄色いアイリス』をもとに書かれた、長編『忘れえぬ死』をご紹介します。

 

 短編集『黄色いアイリス』とはタイプが違いますが、こちらもドラマ化・コミカライズされた人気作品ですよー。

 

 短編『黄色いアイリス』が書かれたのが、1937年。

 その8年後の1945年に発表された長編『忘れえぬ死』は、事件の状況は『黄色いアイリス』とほぼ同じなのに、登場人物探偵役も、それどころか事件の真相まで変わっているのです。

(びっくり)(やるなあ女王)

 

 次回もまた、おつきあいいただけたら嬉しいです。

 

 \次回記事はこちら/

 

 

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 みなさま、どうぞ楽しい物語体験を ♪

 

 

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