印象的な彼の写真作品、謎のサークル「K2」、唯一の家族である姉の朱里。
「欲望」とは、「見る」とは、「美しい」とは……。
木原坂についての本を書くため取材するライターの「僕」は、彼の周囲の異様な世界に絡めとられていく。
2013年出版。
2014年本屋大賞候補、2018年映画化。
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ミステリーとしては異色の読み心地。
芥川賞作家の張り巡らせた、
高度で耽美なワナへようこそ。

「去年の冬、きみと別れ」作者・中村文則
作者の中村文則は愛知県生まれ。
2002年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。
2005年に『土の中の子供』で芥川賞受賞。
2010年に大江健三郎賞を受賞した『掏摸(すり)』は世界各国で翻訳。
2014年に日本人で初めてアメリカ「デイビッド・グディス賞」を受賞。
2013年出版の本作は、翌年の本屋大賞候補に選ばれ、2018年に映画化されました。
「去年の冬、きみと別れ」あらすじ
主人公の「僕」は、木原坂についての本を書くため、拘置所に面会にいきます。
アート写真専門のカメラマンである木原坂の、過去に賞を取った写真は、“真の欲望は隠される”と評された印象的なものでした。
親にネグレクトされていた木原坂の、唯一の家族である姉の朱里(あかり)
彼の友人の加谷(かたに)
コレクターたちと、「K2」というサークル。
「僕」は取材を続けるうちに、関係者たちの謎めいた世界に絡めとられていきます。
一方、木原坂は、手紙で自分の内面を吐露し――。
「去年の冬、きみと別れ」感想
人気作家の純文学風ミステリー
実はわたくしとらじ、本書の作者・中村文則先生のファンです。
つやがあってきゅっと詰まっていて、どこか揺らぎを感じる、あの文章が好きなんですよねー。
あるとき本書をみつけて、
おお、こんな作品も書いてたのか中村せんせー、
と手に取ったところ、
本屋大賞候補で映画化もされた(主演はEXILEのがんちゃん)有名作品だとか。
ぼんやりしたファンですみません 笑
内容は、うーん、純文学風ミステリーとでも申しましょうか。
最初の献辞を含めても文庫本で187ページという短い作品なのに、構成は複雑。
深く美しい文章と耽美な世界。
濃厚なドラマを経ての、ふうと息をつきたくなる読後感。
そしてそれらに加えて、
トリックはしっかり・謎解きと伏線回収はきっちり。
(なんだか、むかし話の『かちかち山』を思い出しました)
ただ……。
文章でミステリーファンを殴る!? 笑
そそる設定と引力 VS トリックと伏線
ミステリーとしては、
魅力的な小物が多すぎ・魅力的に語りすぎ
じゃないかなー、この作品 笑
木原坂の撮ったある写真や、あるジャンルのコレクターたちについての、「もってかれる」感のある描写とか。
「僕」と取材相手(これがまたインテリぞろいで)の会話劇みたいなやりとりとか。
読むと、ぐぐぐっと引き込まれて、いつのまにかその世界にどっぷり浸ってしまって、
なっかなか謎を追うモードに戻れない 笑
つまり、
歌うのがうますぎて、ミステリーとしてはバランスが悪い 笑
ついでにいうと、謎はちゃんと解けたけど、
もっとあれのこと知りたかったなー。
あの人たちやあの人たちが、どういう関係だったのかも知りたかったなー。
(そんな気持ちにさせられる、なんともそそる設定なのです。
もっと長い作品だったら、じっくり書きこんでもらえたのだろうか 笑)
そんなこんなで、
謎解きや伏線回収がきっちり行われているにもかかわらず、
ラストはあまり「すっきり!」とはなりません。
とはいえ、
メイントリックは新しく、
破天荒だけどギリ実行できそうなあのトリックも印象的。
有名なあの伏線もおちゃめな感じだし、
犯行動機には超納得。
つまり、
文章でミステリーファンを殴りにきてるというか。
耽美な世界に読者をどっぷり浸らせておいて、
ふたを開けたらガチのミステリーファン向け作品っていう、
といいたくなる作品なのです。
(ほめてます 笑)
というわけで、
われこそはというミステリーマニアの皆さま、ぜひお読みください ♪
なお、「文庫解説にかえて」では、
単行本の刊行時に読者から「わからない」という意見が多数届いたという、ある文の意味について書かれています。
\気になる方は単行本ではなく文庫をどうぞ/
「去年の冬、きみと別れ」映像化不可能小説、まさかの映画化!
映像化不可能と思われた本書ですが、2018年に、まさかの映画化 笑
主演の岩田剛典さんをはじめ、山本美月さん、斎藤工さんなど、人気俳優の出演でも話題になりました。
「去年の冬、きみと別れ」こんな方におすすめ
- 中村文則ファン
- 複雑な構成も伏線も大好物!なミステリーファン
- 芥川賞作家のワナに挑戦したい方
- とにかく新しいものを読みたいミステリーマニア
におすすめします。
※ところで、本書のタイトルって、クリスティーの別名義作品と似てますよね 笑
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
みなさま、どうぞ楽しい物語体験を ♪
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