「七人のおば」パット・マガー:恋愛ドラマ・ホームドラマ好きにおすすめの「被害者探し」安楽椅子探偵ミステリー

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 1947年ロンドン。
 アメリカ人女性サリーは、イギリス人のピーターと結婚して渡英し、幸せな新婚生活を送っていたが、旧友からの手紙により、おばが夫を毒殺してみずからも自死したことを知る。
 問題は、アメリカにいるサリーの7人のおばのうち、手紙に書かれた人物が誰なのかわからないことで――。

 1947年発表の、犯人探しだけでなく被害者探し(&安楽椅子探偵もの)で有名な「変格推理小説」
 
 
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■目次■

 

七人のおばアイキャッチ

「七人のおば」あらすじ

 第2次世界大戦直後の1947年、アメリカ生まれアメリカ育ちの22歳のサリーは、イギリス人のピーターと結婚してロンドンに移り住み、妊娠も判明して幸せな新婚生活を送っていました。
 
 しかし、ある日届いた旧友からの手紙で、アメリカで暮らすおばが、夫を毒殺して自らも自死する事件があったことを知ります。
 
 困ったことに、手紙にはおばの名前が書かれておらず、サリーの7人いるおばのうち、誰が問題の人物なのかわかりません。

 15歳のとき事故で両親を亡くしたサリーは、ニューヨークに住む父の姉・クララ伯母夫婦の屋敷に引き取られ、裕福な伯母夫婦に加えて、伯母と父にとって義母妹にあたる6人の叔母たちと共に暮らしました
 
伯母1人+叔母6人=7人のおばというわけです)
 
 サリーの父とクララ伯母さんの実母が亡くなったあと、ふたりの父(=サリーの祖父)は再婚。
 後妻との間に6人の娘をもうけます。

 ところが、6番目の娘・ジュディの出産後に、後妻も亡くなってしまいました。

 そこで、既に結婚していたクララ伯母とその夫フランクが、生まれたばかりのジュディをはじめ、ドリスモリーイーディスアグネステッシーの6人の異母妹たちを引き取り、妻に先立たれた父も含めて世話をしたのです。
 
 その後、父も亡くなり、子どものいないクララ伯母夫婦は、6人の異母妹たちの親がわりになったのでした。
 
 サリーが屋敷に引き取られた15歳の4月、結婚した叔母はそれぞれの家庭に、末のふたりの叔母は大学の寮にいて、普段から屋敷で暮らしていたのは、クララ伯母夫婦と未婚の叔母たちだけでした。

 その後、叔母たちの結婚を巡って、さまざまな事件が起こります。
 
 それぞれ強烈な個性を持つおばたちと過ごした7年間を思い返しながら、果たして夫を毒殺したおばは誰なのか、サリーとピーターは考えますが――。
 
 原題は“The Seven Deadly Sisters”

「七人のおば」作者パット・マガー

 作者のパット・マガーはアメリカの作家、パットの代わりに本名のパトリシアを用いることもあったそうです。

 

 1946年から1950年にかけて年に1作のペースで発表した、「被害者探し」「探偵探し」「目撃者探し」などの、「変格推理小説」と呼ばれる5作品で有名とのこと。

(「変格推理」という言葉、初めて知りました)

 

 本作はその5作品の内の2作目です。

 

 その後は、一般的なミステリーや他ジャンル小説を執筆。

 セレナ・ミードシリーズ(スパイもの)が高く評価されています。

 

※「変格推理」の第1作はこちら
(シリーズものではありません)

 

 第3作はこちら
(第2作は当記事で紹介している『七人のおば』です)

 

 第4作はこちら

 

 第5作は新版が!「被害者探し」です

「七人のおば」感想

うまい!

 作者のパット・マガー、(主に恋愛の場での)人間を描くのがうまいです!

 

 7人もいるサリーのおばたちは、全員が全員、「あー、こういう人っているよね……」と思わせるすごい存在感 笑

 

 7人がきっちり描き分けられていて、読み進めるだけで性格や互いの関係が頭に入ってくるのも、長い年月の中で起こるさまざまなエピソードが整理されているのも、すごいです。

 

 また、セリフから伝わってくる姉妹独特(?)の遠慮のない感じが、非常に息苦しい 笑

 

 そんな彼女たちに比べると、主人公のサリーと夫のピーターは、圧倒的に影が薄いです 笑

恋愛ものが苦手な方にはおすすめできません

 恋愛のエピソードがあまりに強烈で、しかも本作の大半が、おばたちの過去の恋愛や結婚にまつわるあれこれ

 

 たとえミステリーが好きでも、そういう話が苦手な方にとっては、しんどい読書になると思います 笑

 

 逆に、ドロドロの恋愛ドラマが好きな方なら、ミステリーに興味があろうとなかろうと、ページをめくる手が止まらなくなること間違いなし。

 

 ときどき、ふとわれにかえって、

 

「自分は今、何を読んでいるのだ?」

 

 ってなるとは思いますが 笑

 

殺人の話、どこ行ったー? 笑

とはいえよくできたミステリー

  恋愛ものが苦手な方と同じく、

 

「キャラに現実味がなくても問題なし!」

「とにかく推理ゲームが好き! キャラは“駒”!」

 

 みたいなミステリーファンも、本書を読み始めたらイライラされることでしょう。

 

 が、ちょっと困るのが、

 

 きれいな造りの安楽椅子探偵ものでもあるんですよね、この作品。

 

 いったい誰が誰を殺したのかという、冒頭の魅力的な謎の他にも、

 

  • ミスリードにはちゃんとびっくりするし、

 

  • 犯行と動機は、誰もが納得するであろうムリのないものだし。

 

 というわけで、人間ドラマとか興味ないという方も、一度読んでみてもいいのではないかなあと。

 

 一度読んだらなかなか忘れない、インパクトのあるお話ですしね。

(↑ フリです)

 

 あと、ドラマドラマとしつこく書きましたが、犯行に関係する叔母たちの恋愛・結婚については書き込まれていたものの、それ以外の心理描写はあっさりしています。

 

 悲惨な事件があったというのに、生まれてくる赤ちゃんに直接関係のないことは気にしない主人公たちの姿は、ドライというか人情味が薄く、正直ショックでした 笑

一度読んだら(ほぼ)忘れられないお話 笑

  実はわたし、今回この本を、有名作品だけど読むのは初めてだなーと思いながら手に取ったんですよ。

 

 で、イントロが終わって、サリーの回想が本格的になってきたところで、急に思い出したんですよ。

 

「あれ? この話、知ってるかも」って 笑

 

 ただし最初は、勘違いかな? って思ってたんですよね。

 なぜならその記憶、ミステリーと関係ないお話のものだと思っていたから 笑

 

 たまたま何かで読んだ、めっちゃドロドロした古い恋愛小説(の記憶)だと思ってました。

 

(実はドロドロ系、苦手なのです。

なので、「こんな家イヤ~」っていう強烈な記憶が…… 笑)

 

 でも、犯人も被害者も動機も、それどころか、途中の人間関係こじれポイントまで 笑、一度思い出したら、つるーーーっとほぼ全部思い出しちゃったんですよね。

 

 それくらいインパクトのある、恋愛や結婚にまつわる心理が丹念に描きこまれた作品です。

 

 でも、われながら、

 主人公のこと全然覚えてなかったってどういうことだろう? 笑

狩りは遠くでやってくれ

 時代や文化の違いにより、作中の価値観が現代日本で生きるわたしと違うことは、わかっているものの。

 

 主人公のサリー夫婦が嫌っている、とある登場人物(Xとします)よりも、Xの性格が歪む原因となった別の登場人物(Yとします)の方が、わたしは嫌いでした。

 

 身近にいてほしくない、絶対!

 

 サリーたち、寛大だなあ。

 もしもYと同じことを男性がやったら、金田一耕助の現場みたいな、おぞましワールド爆誕だよ?

 

(ファンの方すみません。ほんとうに苦手なんですドロドロ 笑)

 

 そしてYよ。

 君が自分を、コントロールできないしする気もないのは、よくわかった。

 

 でもお願い。

 

 どうしても狩りをせずにはいられないなら、

 せめて、

 

 近場ではやめてあげて 笑

勝てないなら逃げて~

 他人をコントロールする力が極端に強い人って、いるものですよね。

 

 みんな、クララ伯母に口では勝てないって、もうわかってるんだからさあ。

 経済的に自立したら、家から離れればよかったのに~

 

 あの時代に、それが大変なのはわかるけど。

 あの人やあの人なら、その気になればやれたじゃん……

 

(そしたらこの物語は始まらないわけですが)

 

 あと、ふと思ったのですが。

 あれだけ世間体を気にするクララ伯母だからこそ、自分の子どもを育てていないことの言いわけに、異母妹たちの結婚の世話やコントロールに全力だったのかもしれませんね。

自分なりに、頑張ったんだよね……

 とある登場人物が、自分を落ち込みから引き上げようと、

 

“喜ぶべきこと”

“自分にできること”

“気がかりだけれど、本当はどうでもいいこと”

(p200)

 

 を、ふらふらしながら一生懸命リストアップする姿が、あまりにけなげで……(涙)

 

 繊細な人が、社会的な要求に応じて、自分が本当にやりたいことを押し殺して日常生活をスムーズに回そうとしたものの、周囲の人たちが悪気なくかけてくるプレッシャーで、精神のバランスを崩してしまう。

 

 そんな姿が浮かび上がってくる、名シーンでした。

名言出ました

 「日中とか他人の前では、もっともらしい反応をしてみせるつもりだけれど、夜に自分をごまかすのは無理よ」(p184)

 

 たしかに~。

それとこれとは違う

 ある登場人物が、別の登場人物(Zとします)について、

 

  • 「信義を重んじる心とフェア・プレイの精神を備えてる」
  • 「正直に、堂々と」ある裏切り行為をしている

(p325)

 

 と、絶賛するシーンがあるのですが。

(特殊な状況なので、その人の逆ギレも入っていますが 笑)

 

 信義とかフェア・プレイについて語るなら、

 被害に遭った側への信義やフェア・プレイにも、目配りしていただきたいものだな

 と思いました。

 

 そして、

「正直」であるということは、

 

  • 「わざと他人を傷つけて、それを悪いと思わない」こと

 

  • 「傷つけた相手にそれまで通り甘える」こと

 

 とは

 
 違う。

 

 とも思いましたね~。

 

 謝るくらいしようぜZは。

(各所に 笑)

 

 つけ加えるなら、

「正直」なことと「下半身が緩い」ことも、違いますよ……。

「大罪」扱いはきつくない?

 タイトルにもある、おばたちの「七人」という数字は、やはりキリスト教の「七つの大罪」にかけているのでしょうか。

 

 他の5人はそれっぽい行動で納得ですが、「暴食」と「怠惰」担当と思われる人たちは、「大罪」扱いするのはちょっとかわいそうな気が。

 時代と環境のせいで、他に逃げ道がなかっただけじゃないかなあ。

「七人のおば」こんな方におすすめ

 前述の通り、
 
  • 恋愛ドラマ好き・ホームドラマ好きなら、たとえミステリーに興味のない方でも楽しく読める作品です

 

  • 逆に、恋愛ものが苦手な方は、たとえミステリー好きでも、本作はあまりおすすめできないかも 笑

 

 また、

 

  • 安楽椅子探偵ものが好きな方
  • 「変格推理小説」に興味のある方

 

 にもおすすめです。

 
 
安楽椅子探偵ものが好きな方は、よろしければこちらも

 

 

 『七人のおば』と、時代も地域(ニューヨーク!)も近い作品 \
 
 
 
 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 みなさま、どうぞ楽しい物語体験を ♪
 
 
 

☆この記事では以下のサイトを参考にしました。

 

○「翻訳ミステリー大賞シンジケート」

2015.05.28 畠山志津佳・加藤篁「必読!ミステリー塾第15回『七人のおば』」

 
 
 
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