ポップな表紙に、臨床心理士による優しい語り口。
とっつきやすいけど中身は盛りだくさん!
2023年度オンライン授業「心のケア入門――支えることのための心理学」を書籍化。
――今から町の心理士の、町で暮らす人々に向けた「こころのケア教室」がはじまります。
「雨の日の心理学」内容
臨床心理士による、わかりやすいけど盛りだくさん!な本
「雨の日の心理学」構成
まえがき ――雨の日のガイダンス
・病気からの回復と同じように、
こころのケアの大部分は、身近にいる素人=一般市民が担っている。
・にわか雨と同じように、身近な人のこころのケアは突然始まるもの。
・こころのケアには、
晴れの日(=元気な日)のケアもあれば、
雨の日(調子が悪い日)のケアもある。
「素人が雨の日に行うこころのケア」についての講義を、書籍化したのがこの本。
素人のための心理学に、少しだけ専門家のための心理学が混ぜ込まれています。
1日目 こころのケアとはなんだろうか ――雪だるまを溶かさない――
・晴れの日のこころのケアの本質=元気を回復するためにはおしゃべりが一番
(1)こころのケアをするのは誰か:大部分は素人
(2)こころのケアとは何か :
ケア(傷つけないこと)が先、セラピー(傷つきと向き合うこと)が後。
両者はぐるぐる回る。
⇒(1)(2)が揃っているのが、こころのケアの基本形
「晴れの日」の日常=こころのケアの充満した場所
「雨の日」をしのいで、「晴れ間」を待つ
・医療人類学:アーサー・クラインマン『臨床人類学』
2日目 こころをわかるとはどういうことだろうか ――既読スルーを思いやる――
・「わかる」=こころのケアの本質
・こころをわかるとは?:(こころで)こころを受け取り、解釈する
・雨の日の心理学とは?:
雨の日の「わからなくなったこころ」を、(100%ではないがある程度)「わかる」ための読解法。
とはいえ、基本は「わからない」
それでも、誰かが「わかろう」とし続けることで、雨の日のこころの孤独は和らぐ。
・具体的に、どうしたらこころがわかるのか?
⇒「意識と無意識」「エロスとタナトス」(フロイト)
⇒「PSポジションとDポジション」(メラニー・クライン):
「白か黒か」と「灰色」
切迫した瞬間から様子見へ
そのときのポジションによって、コミュニケーションの感じ方は変わる
3日目 こころはどうしたらきけるのか ――ゼリーをやりとりする技術――
・ケアをするときの具体的な手段:「きく」と「おせっかい」
・「きく」とは何か
⇒「転移と逆転移の理論」(フロイト):
きいてもらう側/きいている側に起こる、相手への感情の変化(無力感が感染するなど)
避けがたいので、修復が大切。
⇒「コンテイニング理論」(ウィルフレッド・ビオン):
二つのこころの間で、こころがどう飛び交うか。
こころからあふれ出したゼリーを、しばし預かってもらって、他人の力を借りて消化するイメージ。
(1)(PSになっている)相手のこころを一旦預かり(=預けた方はこころが軽くなる)、
(2)考えて「消化する」=「わかる」→結果、「○○だったんだね」(Dの言葉)と相手に返すことも
(3)それを受けて、(ああ、わたしは○○だったのかもしれない)と相手が思える
※コンテイニングは、ケアする側のこころのケアが十分でなければ困難
・「聞く」:終わり時間・場所を決めてもらい、並んで行う。ゆっくりでいい。
・「聴く」:上級篇
・「また話そう」で終われば孤独じゃない
・「優しさとは技術である」ノーベル賞作家オルガ・トカルチュク(ポーランド人):
優しさとは、人と自分との「似ているところを見つける技術」
4日目 こころはなにをすれば助かるのか ――余計なお世話と助かるおせっかい――
・おせっかいとは何か?:
ニーズを満たす、環境を変えるのが「助かるおせっかい」
(ニーズ以外のものを押し付け、本人を変えようとするのが「余計なお世話」)
・「ほどよい母親理論」(ウィニコット):
完璧な環境より、ときどき失敗する環境の方がいい。「大人になる」機会を得られるから。
たまにケアを失敗してもやり直す=「ほどよい」
・おせっかいの技術:
からだ(≒身の回り)を気にかける、モノ・お金、 相談できる人を増やす(相談の仕方をアドバイスする)、などなど
5日目 ケアする人をケアするもの ――つらいとき、たのしいとき――
・ケアする人が元気であることが一番大切:孤独にならない!
・「逆転移の理論」:(3日目参照)
辛さが感染したり、古傷が痛んだり(相手の傷と自分の傷の混乱)
→対応:「こころが巻き込まれているな」と気づく=問題から距離をとる
・「依存労働の理論」(エヴァ・フェダー・キテイ):社会の問題
・ケアする人をケアするには?
⇒社会:お金、人手、決定権、承認欲求が満たされる扱い、仲間(同業者や当事者、先輩後輩)
⇒個人:辛くなったら自分に贅沢を許す、勉強(知識が孤独を防ぐ)、休養(ひとり時間)、愚痴を言える友達、「よくなっているところもある」と振り返る
もっと勉強したい人のためのブックガイド・あとがき
関連本の紹介や、オンライン講義の際の質疑など
「雨の日の心理学」感想・印象に残ったところ
・「晴れの日のケア」についてはこれまで意識していなかったので、新鮮でした。
・「転移」など、聞いたことはあってもよく知らなかった心理学のワードについて学べたのもよかったです。
・オンライン講義の参加者との質疑応答が掲載されていて、その内容がすごく実際的でした。
・最初は、心理学を学んだこともなければ医療従事者でもないわたしには、他人ごとではないとはいえ、ちょっと遠い内容の本かと思っていました。
でも、「ケアする人が元気であるために」というあたりは、子育て関係(産後うつの防止など)でいわれていることと共通で、「おお、それなら知ってるわ」と 笑
「ケア」って、思っていたよりいろいろあるのですね。
そしてこころのケアは、「ケア」の一部なんですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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