「雨の日の心理学 こころのケアがはじまったら」東畑開人 ~雨の日も、晴れの日も~

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――こころのケアとは何か、どうすればこころをケアできるのか、その本質から小手先の技術までを惜しみなくお教えする全五回の授業です。

ポップな表紙に、臨床心理士による優しい語り口。
とっつきやすいけど中身は盛りだくさん!
2023年度オンライン授業「心のケア入門――支えることのための心理学」を書籍化。

――今から町の心理士の、町で暮らす人々に向けた「こころのケア教室」がはじまります。
 

 
■目次■

 

雨の日の心理学アイキャッチ

「雨の日の心理学」内容

臨床心理士による、わかりやすいけど盛りだくさん!な本

 ひと通り目を通しただけでも、多くの方の助けになりそうな本だなと思いました。
 
 ……ですが、(心理学初心者で、医療従事者でもないわたしにとっては)
 小さなエピソードから学術的な話まで、内容がとにかく盛りだくさん
 
 すべてを理解しようとすると、なっかなか読み終わらない! 笑
 
 臨床心理士である著者の東畑開人さん、めちゃくちゃサービス精神旺盛です
 
 だけど、この本で「助かった~」ってなる方は多いと思うので、早くご紹介したい!
 
 というわけで、この記事では
(まだ読み込み中ですが 笑)ざっくり紹介させてください。
 
 なお、本書は著者の主宰する白金高輪カウンセリングルーム主催で行われた、
 2023年度オンライン授業「心のケア入門――支えることのための心理学」全5回の内容を書籍化し、2024年9月に出版されたものです。

「雨の日の心理学」構成

まえがき ――雨の日のガイダンス

・病気からの回復と同じように、

 こころのケアの大部分は、身近にいる素人=一般市民が担っている

 

・にわか雨と同じように、身近な人のこころのケアは突然始まるもの。

 

・こころのケアには、

 晴れの日(=元気な日)のケアもあれば、

 雨の日(調子が悪い日)のケアもある。

 

「素人が雨の日に行うこころのケア」についての講義を、書籍化したのがこの本。

 素人のための心理学に、少しだけ専門家のための心理学が混ぜ込まれています。

1日目 こころのケアとはなんだろうか ――雪だるまを溶かさない――

・晴れの日のこころのケアの本質=元気を回復するためにはおしゃべりが一番

 

(1)こころのケアをするのは誰か:大部分は素人

(2)こころのケアとは何か :

 ケア(傷つけないこと)が先、セラピー(傷つきと向き合うこと)が後

 両者はぐるぐる回る。

 

⇒(1)(2)が揃っているのが、こころのケアの基本形

 

 「晴れの日」の日常=こころのケアの充満した場所

 「雨の日」をしのいで、「晴れ間」を待つ

 

医療人類学:アーサー・クラインマン『臨床人類学』

2日目 こころをわかるとはどういうことだろうか ――既読スルーを思いやる――

 ・「わかる」=こころのケアの本質

 

・こころをわかるとは?:(こころで)こころを受け取り、解釈する

 

・雨の日の心理学とは?:

雨の日の「わからなくなったこころ」を、(100%ではないがある程度)「わかる」ための読解法。

 

とはいえ、基本は「わからない」

 

それでも、誰かが「わかろう」とし続けることで、雨の日のこころの孤独は和らぐ

 

・具体的に、どうしたらこころがわかるのか?

 

「意識と無意識」「エロスとタナトス」(フロイト)

 

「PSポジションとDポジション」(メラニー・クライン):

 「白か黒か」と「灰色」

 切迫した瞬間から様子見へ

 そのときのポジションによって、コミュニケーションの感じ方は変わる

3日目 こころはどうしたらきけるのか ――ゼリーをやりとりする技術――

 ・ケアをするときの具体的な手段:「きく」と「おせっかい」

 

・「きく」とは何か

 

「転移と逆転移の理論」(フロイト):

きいてもらう側/きいている側に起こる、相手への感情の変化(無力感が感染するなど)

避けがたいので、修復が大切

 

「コンテイニング理論」(ウィルフレッド・ビオン):

二つのこころの間で、こころがどう飛び交うか。

こころからあふれ出したゼリーを、しばし預かってもらって、他人の力を借りて消化するイメージ。 

(1)(PSになっている)相手のこころを一旦預かり(=預けた方はこころが軽くなる)、

(2)考えて「消化する」=「わかる」→結果、「○○だったんだね」(Dの言葉)と相手に返すことも

(3)それを受けて、(ああ、わたしは○○だったのかもしれない)と相手が思える

 

 ※コンテイニングは、ケアする側のこころのケアが十分でなければ困難

 

「聞く」:終わり時間・場所を決めてもらい、並んで行う。ゆっくりでいい。

 

「聴く」:上級篇

 

「また話そう」で終われば孤独じゃない

 

・「優しさとは技術である」ノーベル賞作家オルガ・トカルチュク(ポーランド人):

優しさとは、人と自分との「似ているところを見つける技術」

4日目 こころはなにをすれば助かるのか ――余計なお世話と助かるおせっかい――

 ・おせっかいとは何か?:

ニーズを満たす、環境を変えるのが「助かるおせっかい」

(ニーズ以外のものを押し付け、本人を変えようとするのが「余計なお世話」)

 

「ほどよい母親理論」(ウィニコット):

完璧な環境より、ときどき失敗する環境の方がいい。「大人になる」機会を得られるから。

たまにケアを失敗してもやり直す=「ほどよい」

 

・おせっかいの技術:

からだ(≒身の回り)を気にかける、モノ・お金、 相談できる人を増やす(相談の仕方をアドバイスする)、などなど

5日目 ケアする人をケアするもの ――つらいとき、たのしいとき――

 ・ケアする人が元気であることが一番大切:孤独にならない!

 

「逆転移の理論」:(3日目参照)

辛さが感染したり、古傷が痛んだり(相手の傷と自分の傷の混乱)

対応:「こころが巻き込まれているな」と気づく=問題から距離をとる

 

「依存労働の理論」(エヴァ・フェダー・キテイ):社会の問題

 

ケアする人をケアするには?

 

社会:お金、人手、決定権、承認欲求が満たされる扱い、仲間(同業者や当事者、先輩後輩)

⇒個人:辛くなったら自分に贅沢を許す、勉強(知識が孤独を防ぐ)、休養(ひとり時間)、愚痴を言える友達、「よくなっているところもある」と振り返る

もっと勉強したい人のためのブックガイド・あとがき

関連本の紹介や、オンライン講義の際の質疑など

「雨の日の心理学」感想・印象に残ったところ

「晴れの日のケア」についてはこれまで意識していなかったので、新鮮でした。

 

「転移」など、聞いたことはあってもよく知らなかった心理学のワードについて学べたのもよかったです。

 

・オンライン講義の参加者との質疑応答が掲載されていて、その内容がすごく実際的でした。

 

・最初は、心理学を学んだこともなければ医療従事者でもないわたしには、他人ごとではないとはいえ、ちょっと遠い内容の本かと思っていました。

 でも、「ケアする人が元気であるために」というあたりは、子育て関係(産後うつの防止など)でいわれていることと共通で、「おお、それなら知ってるわ」と 笑

「ケア」って、思っていたよりいろいろあるのですね。

 そしてこころのケアは、「ケア」の一部なんですね。

 

 

 

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

 

 

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