「ラッシュライフ」伊坂幸太郎:伊坂作品初級者におすすめ・仕掛けを満喫!ファン必読の長編

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「ばらばらのエピソードを読んでいたはずが、いつのまにか……」

 そんなタイプの小説が好きな方なら、迷わず読んで!

 2002年発表の、伊坂作品人気のきっかけとなったベストセラーです。
 
 
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ラッシュライフアイキャッチ

「ラッシュライフ」あらすじ

 冒頭、戸田という画商と共に新幹線で仙台に向かう、28歳の志奈子(しなこ)

 気に入らない相手を金の力で容赦なくつぶす戸田に、
「おまえだって、私に買われたようなものではないか」
 といわれた志奈子は、恐怖と罪悪感で身体がすくみます。
 
 ◇◇◇
 
 場面変わって、泥棒の黒澤(くろさわ)がマンションの玄関を出ると、ちょうど隣の部屋から出てきた若い男性と鉢合わせしました。

 彼からのちょっとした頼まれごとを済ませて仙台駅に着くと、開店したばかりの喫茶店の前には行列ができ、駅前の展望台周辺には「エッシャー展」の騙し絵のポスターが。

 その後、「あなたの好きな日本語を教えて下さい」という白人女性のスケッチブックに「夜」と書いた黒澤は、野良犬らしい老犬を見かけますが、「泥棒と犬が仲良くしてはいけない」という自らの美学に従って歩き去ります。
 
 ◇◇◇
 
 仙台駅前の喫茶店で、道で受け取ったチラシの裏に絵を描いている、奨学金で大学に通う河原崎

 待ち合わせていた「幹部」の塚本は、「信者」たちが心酔する高橋という男性について不穏な話をします。

 河原崎のかぶっている赤いキャップは、一時期大人気で品薄になった商品ですが、買ってくれた父は3年前自死していました。

 ◇◇◇
 
 精神科医の京子は、自宅に電話をかけてきた夫から、
「別れよう。家にはもう帰らない」
 といわれて喜びます。

 愛人の青山に、
「あやうく罪を犯すところだった」
「これで中止だ」
 といわれた京子ですが、
「うちの旦那のほうだけね」
 と答え――。

 ◇◇◇
 
 リストラ後の職がみつからず、生活費や別れた妻子への養育費にも事欠く、元デザイナーの豊田(とよだ)

 被害妄想にとらわれている彼は、仙台駅前の白人女性のスケッチブックに「無職」と書きそうになったり、喫茶店で割引券が使えず店員ともめたりします。

 その後、ハサミを持った女性が野良犬に近づくのを見た豊田は、老犬を守ろうと、思わず自分の犬だといってしまい――。

「ラッシュライフ」感想

仙台(と新幹線)を舞台にした群像劇

 本書は、

  • 4人の視点人物のパート

 と

  • 狂言回しとなる1人のパート

 からなる群像劇。

 

 それぞれのパートがきっちり描き分けられ、

 これしかない!という順番でつながれていく、

 騙されて嬉しい傑作✨です。

 

 物語の舞台は、作者の住む仙台、および、東京・仙台間を結ぶ新幹線のグリーン車。

 

 仙台駅前の喫茶店や展望台、岩手山なども出てきて、土地勘のある方は楽しめそうです。

 

(ただし、過去のインタビューによると、作者は作品内で架空の場所も登場させているそうですが 笑)

 

 \伊坂作品で新幹線といえばこちら!/

 

 \ハリウッド映画にもなりました/

ひとつだけご注意

 それぞれのエピソードがぐわん!と収束して予想外の形に、

 というのが本作の魅力。

 

 というわけで、途中までは互いに関係なさそうなエピソードが着々と積み上げられていくのを、読者は読み進むことになるわけですが。

 

 キャッチーな導入部はいいとして、中盤あたりでおそらく、

 みなさまちょっと飽きてきます 笑

 

(ていうか、わたしは飽きました 笑)

(伊坂せんせーごめんなさい)

 

 でも頑張って!

 

 ここちゃんと読んでおかないと、

 後半の怒涛の伏線回収が楽しめません!

 

 あ、ちょっと飽きるといっても、

 下のレジェンド作品の問題パート ↓ に比べたら、比べ物にならないくらい読みやすく面白いのでご安心を!

 

(各方面にたいへん失礼な発言申し訳ございません……)

 

 \第2部の前半がアレなレジェンド作品/

 

 \イントロがアレなレジェンド作品/

伊坂幸太郎作品の「初級編」

 上に書いた、途中ちょっと我慢が必要なことや、

 とある仕掛けによってちょっとややこしい(最後にはわかりやすく提示されますのでご安心を!)こと。

 

 そんな理由から、個人的に本作は、

 伊坂作品の入門編の先の、初級編

 と呼べるのではないかと思っています。

 

 

 ここでいう「初級」とは、

 

  • あの伊坂幸太郎の作品だから、多少読みにくいところがあっても、この先面白くなると信じて読み続けられる

 

  • 伊坂ファンとして、評価の高いこの作品は読んどかないと

 

 とか、

 

  • むしろこういうタイプ大好き というミステリー好き

 

 という域に達した方のこと 笑

 

 

 この点、「入門編」として前の記事でご紹介した陽気なギャングシリーズは、

 どなたにでも読みやすくわかりやすいんですよねー 笑

 

事件が大渋滞:バラバラ殺人・空き巣・不倫殺人・ひき逃げ・拳銃密売・カリスマと信者たち

 ミステリーとしては、

 それぞれのパートでさまざまな事件が起きた結果、

 

 おなじみの「犯人は誰だ?」という謎の他、

「被害者は誰だ?」「動機は?」「方法は?」「アレはどこへ消えた?」などなど、

 

「この1冊で全部解決するの?」

 

 といいたくなる、とっちらかった状況になるのですが。 

 

 ご安心ください。

 
謎はいっぱい出てくるけど
全部キレイに解決します!
 
お楽しみに~。

キャラの立った登場人物たち:とらじの推しは黒澤です

黒澤を探せ!

 たくさんの登場人物が思い思いに振舞う中、わたしのお気に入りは、泥棒の黒澤パートでした。

 

(検索したら、読者に人気のあるキャラらしいですね)

 

 この黒澤、本作で登場して以来、

 他の伊坂作品にもスターシステム的にちょいちょい出てきますので、気になる方はぜひチェックを。

 

 \いい話だけど、設定がきつかった……(号泣)/

 

 \未読ですがちょっとだけ黒澤の話が出るとか/

 

 \短編集です/

 

 \ゆるめの連作短編集だとか/

 

 \長編です/

志奈子・河原崎・京子・豊田

 東京・仙台間の新幹線まわりにしか登場していないとはいえ、志奈子の悲惨な状況にはかなりのインパクトがありました。

 

 業界の闇的もあるんだろうけど、ほんと災難だよなあ。

 気の毒としか。

 

 戸田が! 憎い!

 

 

 河原崎については、動きが衝動的で考え方も独特で、読んでいて内面を掴めませんでした。

 

 それでも、心に負ったものが、徐々に見えてきた感じはあり。

 やったことはアレだけど、かわいそうだな……。

 

 

 京子パートは、キャッチーだけどやや乱暴 笑

 特に終盤、京子の扱いが雑すぎる 笑笑

 

 

 そしてそして、

 豊田があのあとどうなったのか、とっても気になります!

 

 ミステリーとか関係なく、ごくごく単純に 笑

 

(みつけて!)(そして気づいて交換して!)

軽妙な会話と名言

 黒澤パートに顕著でしたが、軽妙な会話もこの作品の魅力。

(次作の『陽気なギャングが地球を回す』より、本作に出てくる会話の方が、わたしは面白かったです)

 

 そこに作者の強いメッセージがしのばされているのは、伊坂作品の特徴です。

 

 

〇印象に残った名言その1・河原崎パート(p125-126)

 

「内臓だよ」

 

「神について考えてね、俺は俺なりに分かったんだ(後略)」

 

「(前略)俺が胃に対してできることは何かと言うと」

 

「何ですか?」

 

「声に耳を傾けて、最善を尽くし、祈ること」

 

 

○その2・黒澤パート(p224)

 

「(前略)喋るカカシでなくとも、何か安心できる存在が自分を見ていてくれるのなら、おそらくこれほどまでに不安になることはないんじゃないかとね。『未来は神様のレシピで決まる』と彼はよく言うんだ。たぶん彼の言う『神様』は、普遍的な何かを指すんだろうな」

 

「『神様のレシピ』か。変な言葉だな」

 

「運命と言うよりはよほどいいと思わないかい。(後略)」

他の伊坂作品との関係

 先に、泥棒の黒澤のスターシステムについて書きましたが、伊坂作品ではキャラクターだけでなく作品同士もリンクしています。

 

 前項で取りあげた「喋るカカシ」についての会話は、デビュー作『オーデュボンの祈り』の、あの人についての噂話から展開。

 

 

 

 河原崎パートのp233で出てくる

「横浜で起きた映画館の爆破未遂事件」

 というのは、

 本作に続き2003年に発表された『陽気なギャングが地球を回す』の、4人が出会うきっかけになった事件のことですね。

 

 \紹介記事はこちら/

タイトルの「ラッシュライフ」とは

 本文前に、タイトルに使われている「ラッシュ」の意味について、英和辞典からの転記があります。

 

 カタカナだと「ラッシュ」と表記されるこの言葉、実は

「lash」「lush」「rash」「rush」という4通りの可能性があるのだとか。

 

 さらに、

「ラッシュライフ(Lush Life)」という曲名のジャズもあるそうです。

 

 作中、登場人物たちがそれぞれの思う「ラッシュライフ」について語るのが、それぞれの人生観を感じられて興味深かったです。

「ラッシュライフ」こんな方におすすめ

  • 凝った構成のミステリーが好きな方

 

  • 伊坂幸太郎ファンの方

 

  • 伊坂幸太郎の初期の代表作を読んでみたい方

 

  • 仙台にゆかりのある方

 

 

 \映画化もしました/

 

 

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 みなさま、どうぞ楽しい物語体験を ♪

 

 

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