「“伏線回収”や“精緻な構成”が魅力と聞いたけど、複雑すぎて楽しめなかったらイヤだし……」
と思っている方へ。
この記事では、初めて伊坂作品を手に取る方におすすめの『陽気なギャングが地球を回す』をご紹介します。
2003年発表の作者の第3作にあたるこの作品は、それぞれ
「他人のウソがわかる」「天才スリ」「即興演説の達人」「精密な体内時計持ち」
という特殊能力を持った、男女4人の銀行強盗のお話。
あっと驚く展開で読後感もいい、軽やかなミステリーですが、深刻なテーマも含んでいて、どんな読者にも刺さると思いますよ ♪

「陽気なギャングが地球を回す」あらすじ
「陽気なギャングが地球を回す」感想
伊坂幸太郎作品初心者におすすめ
伊坂作品の特徴である、
- 膨大な伏線と華麗なその回収
- スリリングなシーン
はしっかりありながら、
- 物語はセリフ中心で、
- テンポ良く軽やかに進んでいく
大人気作品です。
とても読みやすく、読後感も爽やか。
(法律的なことはさておき)
読んでいると頭の中に映像が浮かんでくるような、とっつきやすいクライムコメディで、初めて伊坂作品を読む方におすすめです。
キャラの立った登場人物たち
それぞれ特殊な能力を持つ、成瀬・饗野・雪子・久遠ら4人の登場人物たち。
個人的には、主人公は成瀬かなと思いますが、
物語は「成瀬 I」→「響野 I」というように、視点人物が交代しながら進んでいきます。
響野の妻の祥子も含め、出てくる人は皆、口が減らないタイプ。
理屈っぽくて無機質な感じの会話が、伊坂作品っぽい。
37歳の響野と二十歳の久遠と中二の慎一の、大人げないフラットな関係も面白かったです。
名言あります
読みやすい一方で、本作はいくつかの深刻なテーマも含んでいます。
軽やかな会話の中に、作者の熱いメッセージがしのばされている印象。
今回、再読して心に残ったのが、自閉症のタダシについての久遠と成瀬のやりとり(p71~72)でした。
「タダシくんは、中枢神経の障害だか何だか分からないけどさ、突然、外国に放り投げられたようなもんなんだよ。コミュニケーションの手段を取り除かれているところからスタートするんだからね。(中略)僕たちの言葉を鸚鵡返しにしたり、文章を丸暗記したり。意味も重要性も分からないから、手当たり次第に記憶する。時折、堪えられなくなってパニックを起こす」
「決めつけるなよ」成瀬は笑う。
「タダシくんはどうにか世の中のルールを探そうとしているんだ。だから、ようやく見つけたルールがちょっとでも変更されていると戸惑うんじゃないかな。(後略)」
あそこは解釈違いです伊坂センセー(公式に抗議するスタイル 笑)
ところでこの作品、本筋とは関係ないのですが、何度読んでも気になることが……。
それは、とある女性キャラの、男の趣味について。
いくら二十歳前後の若い頃のこととはいえ、
あの人が、よりによってあの男とつき合って、子どもを産んで3人で暮らすとは、思えないんだがー!
百歩譲って、予期せぬ妊娠はあるかもしれないけど。
いくら親に関心を持たれていなかったからって、
そもそも、あいつとつき合わなくない?
おまけに、大事な子どももいるのに、
一緒に暮らさなくない?
既読の方のご意見が知りたいなー 笑
「陽気なギャングが地球を回す」作者・伊坂幸太郎とは
作者の伊坂幸太郎は、1971年千葉生まれ。
仙台在住で、作品には仙台を舞台にしたものが多いです。
2000年に『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビュー。
この記事でご紹介した『陽気なギャングが地球を回す』は、
- 2002年発表の第2作『ラッシュライフ』に続く第3作で、
- デビュー前の1996年にサントリーミステリー大賞佳作となった『悪党たちが目にしみる』を元に書かれた作品
とのこと。
また、
『重力ピエロ』(2003年)『チルドレン』(2004年)『グラスホッパー』(2004年)『死神の精度』(2005年)『砂漠』(2006年)が直木賞候補になったあと、
2007年発表の『ゴールデンスランバー』が同賞の候補となることは辞退した、というエピソードも有名です。
国内外で作品が読まれ様々な賞を受賞している、ミステリー界を代表するベストセラー作家のひとり。
ちなみに『ゴールデンスランバー』は、
- 2008年本屋大賞
- 第21回山本周五郎賞
- 『このミステリーがすごい!』2009年版1位
を受賞/獲得し、映画化もされています。
「陽気なギャング」シリーズ
第1作「陽気なギャングが地球を回す」(2003年発表)
この記事でご紹介しました。
第2作「陽気なギャングの日常と襲撃」(2006年発表)
第3作「陽気なギャングは三つ数えろ」(2015年発表)
「陽気なギャングが地球を回す」映画化
本作は2006年に映画化されました。
主なキャストは下記の通りです。
- 成瀬:大沢たかお
- 雪子:鈴木京香
- 響野:佐藤浩市
- 久遠:松田翔太
- 祥子:加藤ローサ
- 地道:大倉孝二
雪子は原作では小柄なので、スタイル抜群の鈴木京香さんとはだいぶ印象が違う……けど、鈴木京香さんがかっこいいから問題なし ♪
わたしは、DVD(Blu-rayかも?)で観ました。
佐藤浩市さん演じる響野の、ケレン味たっぷりの「ロマンはどこだ?」(注:原作では「?」はついてません 笑)が印象に残っています 笑
「陽気なギャングが地球を回す」コミカライズ
本作は2006年にコミカライズされています。
「陽気なギャングが地球を回す」こんな方におすすめ
- 伊坂幸太郎作品を初めて読む方
- 軽く楽しめるミステリーを読みたい方
(「新書刊行時あとがき」によれば、作者は90分くらいのあまり頭を使わず楽しめる映画が好きで、そういうものが読みたくなって本書を書いたそうです)
- クライムコメディが好きな方
- ジャンルを問わず、物語での伏線回収が好きな方
「陽気なギャングが地球を回す」が面白かったあなたには、こんな伊坂幸太郎作品もおすすめ
「ラッシュライフ」:伏線回収バッチコイ!な方に
「伏線回収」からの、「壮大な騙し絵」
伊坂幸太郎の初期代表作。
「ギャング」の伏線回収が楽しめた方なら、ぜひどうぞ!
\紹介記事はこちら/
「死神シリーズ」:人間ドラマや会話・作者の人間観に惹かれた方に
「ギャング」では伏線回収よりも、人間ドラマや会話、そこから伝わる作者のメッセージと人間観に惹かれた!
という方には、こちらがおすすめ。
ミステリー色は薄めかも。
第1作「死神の精度」:死神が主人公の連作短編集
ユニークな死神が、それぞれの人の「死」を見定めるため人間界で過ごす7日間を描いた、ドライで独特なテイストの連作短編集です。
読みやすくわかりやすい作品揃い。
とはいえ、そこは伊坂作品、楽しい仕掛けもあるので、ぜひ順番に読んでください。
表題作は日本推理作家協会賞短編部門受賞。
巻末には作者のインタビューも。
\紹介記事はこちら/
金城武さんの死神がスタイリッシュな映画化作品。
第2作「死神の浮力」:こちらは長編
「殺し屋シリーズ」:伏線&構成&アクション!ハリウッド映画にもなりました
ハリウッド映画にもなった、人気の「殺し屋シリーズ」が読みたい方はこちら。
どこから読んでも大丈夫ですが、やはり第1作から読む方が、リンクした部分でニヤニヤする楽しみがあります 笑
第1作「グラスホッパー」
復讐のため殺し屋になろうとする主人公。
とはいえそこは伊坂作品、いろいろ巻き込み巻き込まれて、明日はどっちだ 笑
美男美女だらけでゲシュタルト崩壊(何の? 笑)を起こしそうな映画化作品。
山田涼介さんのアクションが評判でした。
コミカライズも。
第2作:「マリアビートル」
個性豊かな殺し屋たちが、東北新幹線で狙い狙われ。
シリーズで一番評価されてる印象があります。
2022年英国ダガー賞最終候補作。
ブラピでハリウッド! 真田広之も!
外国人にとって、新幹線って新鮮らしいですね。
第3作:「AX アックス」
シリーズ初の連作短編集。
今度の殺し屋は、愛妻家!
2020年年間文庫ランキング(オリコン・日販・TSUTAYA・ダ・ヴィンチ)1位☆
(※殺し屋シリーズ3冊セットもあります)
第4作:「777 トリプルセブン」
第2作「マリアビートル」の姉妹版。
あの人が出るぞー。
「アヒルと鴨のコインロッカー」:伏線&構成&人間ドラマの極上ミステリー!
伊坂作品で一番悲しい物語という評判も……。
(悲しすぎて、とらじは紹介を諦めました! でも面白いからぜひ読んで!)
第25回吉川英治文学新人賞受賞。
映画も名作!
主人公・椎名役の濱田岳さんと、彼に書店襲撃を持ちかける河崎役の瑛太(現・永山瑛太)さんファンは、絶対観た方がいい!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
みなさま、どうぞ楽しい物語体験を ♪
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