この記事では、
綾辻行人「館シリーズ」の以前ご紹介した第1作『十角館の殺人』に続く、
- 『水車館の殺人』(第2作)
- 『迷路館の殺人』(第3作)
- 『人形館の殺人』(第4作)
を取りあげ、
あらすじ・感想・どんな方におすすめかをまとめました。
有名な「館シリーズ」に興味があるけれど読むのを迷っている方に(なにせ全10作の大作ですから 笑)、参考にしていただけたら嬉しいです。
\第1作「十角館」はこちら/
館シリーズ第2作「水車館の殺人」あらすじ・感想(1988年出版・2008年改訂)
「水車館の殺人」あらすじ
岡山県の森の中に建つ、巨大な3つの水車と塔が特徴の「水車館」
1986年9月28日、顔と手を白いマスクと手袋で覆った館の主は、ちょうど1年前にこの館で起きた殺人事件を思い返しながらも、これまで通り年に1度の客たちを迎えようとしていました。
そこへ、前作『十角館の殺人』に登場した島田潔(この作品では36歳)が現れます。
前作に出てきた、建築家・中村青司が大分県角島の青屋敷で亡くなった事件が起きたのも、同じく1年前の1985年9月のこと。
(ちなみに「十角館の殺人」事件が起きたのは、その半年後の1986年3月)
つまり、
1年前(1985年9月28日)に起きた水車館での殺人事件は、青屋敷の事件の直後に、それも、同じ中村青司設計の館で起きていたのです。
しかも、犯人とされているのは、島田の友人の古川。
こうした経緯で、1年前の事件に興味を抱いた島田は、客たちと共に水車館に滞在することになりますが、今年も事件が――。
「水車館の殺人」感想・こんな方におすすめ
水車が回るお屋敷での密室連続殺人、白い仮面の人物、ミステリアスな薄幸の美少女、しかも舞台は岡山県……という、たいへんわかりやすい
メイントリックや、犯人の行ったとある印象的な小細工も、本格ものらしさ満点です。
・横溝正史作品が好きな方
・絵画や画家、美術業界に興味のある方
・幻想的な作品が好きな方
におすすめ。
館シリーズ第3作「迷路館の殺人」あらすじ・感想(1988年出版・2009年改訂)
「迷路館の殺人」あらすじ
1988年9月、夏風邪で寝ていた島田のもとに、『迷路館の殺人』というタイトルの本が届きます。
1987年4月に起こった実際の殺人事件をもとに書かれたという推理小説で、著者名は鹿谷門実(ししや かどみ)
鹿谷をよく知る島田は、謹呈されたその本を読み始めます。
小説の舞台は、京都の丹後半島。
大物ミステリー作家・宮垣葉太郎(みやがき ようたろう)が暮らす、家中の廊下が迷路状に入り組んでいる「迷路館」で、設計者はあの中村青司です。
1987年4月1日、館で開かれた宮垣の還暦記念パーティーで、招かれた作家たちは巨額の“賞金”狙いの競作を行うこととなります。
そこには、推理小説マニアで前年秋の「水車館」の事件にいあわせた、37歳の島田潔の姿もありましたが、思わぬ事件が――。
「迷路館の殺人」感想・こんな方におすすめ
編集者の名前が有名な方のもじりだったり、様々な名作ミステリーに触れるなど、遊び心満載の作品。
作中作だけでなく、作中作中作まである、凝った構成が面白い。
最後の最後の最後まで、気が抜けません。
(実はわたし、この、本当のラストに明らかになる仕掛けが大好きで!
チャーミングすぎて、事件の余韻を吹き飛ばしちゃってますが…… 笑)
島田潔って、前作でのセリフ通り、真相を知りたいだけで犯人逮捕にはそこまで興味がないんですね。
なお、真相解明の手がかりになったあるものについては、その性質や、衣類の構造と骨格から、また、のんびりしている時間はなかったはずであることから、「そこまで発生することは考えにくいのでは?」 と、個人的には思います。
(ネタバレ回避のため、ぼんやりした表現ですみません 笑)
折り紙作家・国立天文台研究職員の前川淳氏による「新装改訂版解説」が、ミステリーファンすぎてかわいいです 笑
・ミステリー作品の仕掛けとか遊び心に目がない方
・ミノタウルス伝説に興味のある方
・迷路が好きな方(綾辻先生って迷路も作れちゃうんですね! 笑)
におすすめです。
館シリーズ第4作「人形館の殺人」あらすじ・感想(1989年出版・2010年改訂)
「人形館の殺人」あらすじ
1987年7月、長期間の入院を終えたばかりの34歳の画家・飛龍想一(ひりゅう そういち)は、亡くなった父が住んでいた京都市左京区にある屋敷へ、母親がわりの叔母と一緒に静岡から移り住みます。
彫刻家・画家だった父の高洋(こうよう)は、「水車館」に登場した藤沼紀一の父、幻想画家・藤沼一成と親しく、また、住んでいた母屋と下宿にしていた離れのあちこちに、自作の白いマネキンを置いていました。
東京の美大に通っていた学生時代、同じ下宿にいた島田潔を兄のように慕っていた想一。
やがて彼は、喫茶店で静岡時代の幼馴染・架場久茂(かけばひさしげ)と偶然再会します。
その後、想一のまわりで理由不明のいやがらせが始まり、匿名の手紙も届いて――。
「人形館の殺人」感想・こんな方におすすめ
シリーズ初の(ほぼ)一人称の、ホラー風味のサスペンス。
シリーズの他の作品とはものすごーく傾向の違う、異色作です。
スレたミステリーファンなら早い段階で仕掛けに気づきそうですが、これは著者による「新装改訂版あとがき」にあるように、その仕掛けが
「発表後しばらくですっかりある種の定番となっていった」
からかもしれません。
・幻想的な作品が好きな方
・あまりミステリーを読みなれていない方
向けの作品です。
(あと、京都大学に縁のある方はいろいろ楽しめそう! 笑)
シリーズ次回予告
「館」シリーズ次回は、第5作『時計館の殺人』をご紹介します。
またおつきあいいただけたら嬉しいです。
(上下巻です)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
みなさま、どうぞ楽しい物語体験を ♪
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