京都市は中京区にあるという、じめじめした路地のつきあたり、古びた雑居ビル5階の「中京(なかぎょう)こころのびょういん」
そこに辿りついた人たちが、いけずでうさんくさい京都男子(?)ニケ先生や、ミステリアスな京女ナース(?)千歳さん、そして処方された(笑)個性豊かな猫たちと織りなす、ハートフルなドラマを描いた連作短編集です。
猫のかわいさにとろけたり、厳しい現実に泣いたり笑ったり。
ほっこりするのにページをめくる手が止まらない、心温まるファンタジー。
2023年3月文庫書き下ろし。
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「猫を処方いたします。」あらすじ・感想
第一話
勤務先の証券会社でのパワハラに悩む、25歳の会社員・香川秀太(かがわしゅうた)
他県出身の秀太は、京都市内独特の住所表記に悩まされながら、古くて汚い雑居ビルにある「中京(なかぎょう)こころのびょういん」に辿りつく。
そこには
「目付きに艶のある」無愛想な美女ナース(?)千歳(ちとせ)さんと、
はんなり系京都男子(?)のうさんくさいニケ先生が。
秀太の症状を聞いたニケ先生は、
「猫を処方します。しばらく様子を看ましょう」
と、金色の目に灰色の毛のビーという猫を秀太に預け、
「こちらをとりあえず、一週間続けてみてください」
と――。
「よく効きますよ。昔から猫は百薬の長って言いますからね。ああ、つまりそこらへんの薬よりも、猫のほうがよう効くいう意味ですわ」
と、適当なような、そうでもないような、いろんな人から怒られそうなことをいうニケ先生 笑
(推定年齢30歳、少し高めで鼻にかかった声の、なよっとした優男)
猫のビーをモフる描写が、いいです!(うっとり)
途中、秀太や同期社員の辛い描写や、少々都合のいい展開もありますが、
秀太はパワハラ上司から逃げてホワイトな職場を得られるのか、
ビーとはどうなるのか、
ハラハラどきどきで一気に読まされました。
……うん。
その住所、わたしも最初見たとき、「え? それだと……」って思ったわ秀太 笑
第二話
新しく来た女性上司とそりの合わない、50代の古賀勇作(こがゆうさく)
ストレスの多い職場で、部下の女性たちのメンタルをチェックする立場のはずが、上司のせいで眠れなくなり、妻と娘からはのけもの扱いされている彼に、
「ちょうど、よく効く猫が」
と、ニケ先生はサビ猫のマルゴを処方して――。
猫の毛が一瞬で服につきまくる問題や、猫の体伸びすぎる問題に、ニヤニヤ 笑
「何回も言うたでしょう」「何回も言うたやないの!」
と、短い間にもヒートアップしていく妻の言葉に、あー、そういうタイプのだんなさんね、と察しました 笑
保護猫センターの副センター長・梶原(かじわら)さんが気になります!
第三話
小学四年生の娘・青葉(あおば)から行きたいとせがまれて、
「中京こころのびょういん」を訪れた南田恵(みなみだめぐみ)
ずっと待っている予約の患者がなかなか来ないというニケ先生は、母娘それぞれの話を聞いて、
「ちょっと強めの猫打ちましょか」
「即効性ありますよ、この猫は」
と、白い子猫を――。
「大抵の悩みは猫で治るもんです。」
というニケ先生。
おお、そうですか。
「あなたみたいにちょっとくらいドアが重く感じても、億劫(おっくう)がらずに入ってきてくれたらええんですけどね。」
というのは、心療内科のことなのか、別のことなのか。
須田(すだ)動物病院の心(こころ)先生や、ナースの千歳さんにそっくりだという舞妓さん(?)の話が出てくる、物語が大きく動く一作です。
思わぬ人物もクローズアップされますよー。
第四話
友人とふたりでバッグ専門店を経営している、アラサーのデザイナー・高峰朋香(たかみねともか)
仕事もプライベートも力の抜き方がわからない彼女は、
またたび茶を飲んでごきげんのニケ先生 笑 に、
「荒療治で、キツめの猫を処方しましょうか。」
といわれるものの――。
ラグドールのタンジェリンのかわいさに、震えてふやけてとろける描写が、笑えるけどわかりすぎます!
アメショのタンクもかわいい!
「ドアは開きますよ。自分が開けたければね。」
というニケ先生が印象に残りました。
第五話
第四話に出てきた、祇園「こま野屋」の芸妓・あび野が主人公。
常連客の紹介で出会った獣医の須田先生から、違法ブリーダーに飼われていた三毛猫を引き取ったあび野。
でも、その猫は――。
いろいろ、つながる一作!
あび野と同じ経験はしていないけど、気持ち、わかるよ……(涙)
三毛もスコティッシュフォールド(ミミ太~)も、たぶん黒猫もかわいい。
そして、千歳ええええ……!(大号泣)
ニケ先生のセリフにも、救われた気持ちになります。
「猫を処方いたします。」作者・石田祥と受賞歴など
作者の石田祥は、1975年京都府生まれ。
2014年に『トマトの先生』でデビュー。
2023年、本作『猫を処方いたします。』を出版し、
第11回「京都本大賞」および第13回「うつのみや大賞文庫本部門」を受賞。
本作は世界30か国から翻訳オファーを受けているそうです。
マンガ「猫を処方いたします。」(コミカライズ)
「猫を処方いたします。」こんな方におすすめ・
シリーズ続編
猫好きさんや、京都好きさん、ファンタジー好きさんにおすすめです。
疲れた大人にも、子どもにも、よく効きます。(あっ、つられた)
表紙がもれなく猫好きにはたまらない、続編たちも紹介しますよ~。
シリーズ第1作「猫を処方いたします。」(この記事で紹介した作品・2023年3月出版)
ニケ先生の秘密が明らかに? シリーズ第2作「猫を処方いたします。2」(2023年11月出版)
\ほ~ら、見て見て ♪/
\紹介記事はこちら/
ニケ先生と千歳さんの過去に迫る! シリーズ第3作「猫を処方いたします。3」(2024年7月出版)
最新作! シリーズ第4作「猫を処方いたします。4」(2025年3月出版)
\処方される~ ♪/
シリーズ次回記事のお知らせ
シリーズ次回記事では、第2作・『猫を処方いたします。2』をご紹介します。
またおつきあいいただけたら嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
みなさま、どうぞハッピーな物語体験を ♪
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