幼い日に戦争で失った自宅と家族の記憶を抱き、ゴシップ誌契約記者「トップ屋」として活躍する29歳の村野善三は、連続爆破・脅迫犯「草加次郎」事件と、女子高生殺害事件に巻き込まれ――。
高度成長期に起きた実在の未解決事件を題材に、村野ミロの出生の謎が明かされる、熱い人間ドラマでいろどられたハードボイルド作品。
1995年発表。
\わたしはこちらで読みました/
※シリーズ第1・2作の紹介記事はこちら

「水の眠り 灰の夢」あらすじ
派手な夜遊びグループ「六本木族」の一員である坂出の家は、父の公彦の屋敷の広い敷地内にある洋風の離れ。
卓也が坂出の屋敷で知り合ったというタキは、サーフボードに乗せられていた少女でした。
「空中サーフィン」のくだりでは、『黒蜥蜴』の「宝石踊り」を連想しました……。
「水の眠り 灰の夢」感想
若者たちの胸アツドラマとハードボイルド
まだ人にも街にも戦争や安保闘争の傷が残ったまま、初のオリンピック開催に向けて急激に変わっていく、60年代前半の東京が本作の舞台。
銀座の街並みや本所の町工場、新宿2丁目のバーや歌舞伎町の深夜喫茶などを背景に、
- 主人公の村野を取り巻く胸アツ人間ドラマと
- 連続爆弾テロと女子高生殺人事件という2つの謎
が描かれます。
まだギリ20代とはいえ、村野の無茶な仕事ぶりや飲み方に、読んでいるとこっちまで疲れを感じました 笑
そういうハードボイルドはいらんて 笑
その分(?)、対照的なラストの爽やかさには胸を打たれます!
見てきたように60年代東京とトップ屋たちを描く、作者・桐野夏生
1963年の東京の街や、トップ屋たちの仕事ぶりが生々しく描かれたこの作品。
ですが、作者の桐野夏生は、1963年当時はまだ小学生。
東京にも住んでいなかったそうで、びっくりしました 笑
※見てきたように作者の知らない時代を描いた人気ミステリーといえばこちら
また、本作では実在の「草加次郎」事件だけでなく、実在した「トップ屋」たちも題材にしています。
井家上隆幸の解説によると、「遠山軍団」とそれを率いる遠山良巳のモデルは、ルポライターから「トップ屋」と呼ばれるようになった梶山季之と「梶山軍団」
梶山たちが活躍し、やがて「傭兵」であるトップ屋たちが姿を消したのが、『週刊文春』だとか。
その『文春』を擁する文藝春秋社からこの作品が出版されているというのが、面白いですよね。
魅力的なキャラたちと青春模様
とらじの推しは、主人公・村善!
シリーズ本編では、主人公・村野ミロの義父で腕のいい調査屋(を引退したばかり)の、余裕たっぷりのおしゃれシニア村善。
(そっちはそっちでかっこいい 笑)
本作での彼は、恋に迷いトップ屋家業に燃える、ひとり暮らしの29歳。
まだ余裕はないけど、人としてまっとうでストイック、一本気でかわいげのある好青年です。
睡眠(とお風呂)時間を削ってスクープをものにし、アホみたいなペースでアルコールとタバコを消費しながらも、自分の原風景は戦争で廃墟となった自宅だと、喪失感を抱え続ける村善。
(かわいそう)
(それはそれとして、ごはんはちゃんとお食べなさい)
「そうか、おれの芯はあの廃墟なのかもしれない」(p123)
なんていってしまう村善。
(かわいそう!)
どう見ても厄介な女子高生タキに、空襲で死んだ3つ下の妹の千代子を重ねてしまう村善。
(優しい!)( え?)
両親を亡くした小学生の頃から、ききわけがよく長男っぽい(三男なのに 笑)、なんとも安定感のある村善。
ですが、助けてもらった後藤の車から降りちゃうシーンは、素直というかコドモでかわいらしいです 笑
そして、本筋とはあまり関係ありませんが、p224のあのシーン。
若者✨って感じで、同じくらいの年頃に転職経験のあるわたくしとらじ、ぐっときました。
スタイリッシュ後藤
村善の親友(といってもいいはず)で、とにかくかっこいい後藤。
- どんな状況でも「いいもの」を見分ける目があって、
- その「いいもの」を手に入れることに躊躇がなく、
- さらっとものにする姿がかっこいいからモテて、
- 結果また「いいもの」に出会う、
……という、正のスパイラルな(そして実家がやたら太そうな)後藤。
29歳とは思えないくらい、いや、遠山プロに入った大学院生(修士)の頃から、スマートで世慣れちゃってる後藤ですけど。
イケメンって昭和の頃からいい匂いがするんだなー、と思わされる後藤ですけど 笑
「灰とダイヤモンド」のくだりは、バカだなあと思いました。
かっこつけすぎ、守りすぎ。そういうときは、怖くても今日まで自分を守ってきた殻を捨てて、変わらなきゃ。
でも辛いなー。
やばい早重
早重は村野の手に負える女じゃない。
(村善ごめん)
あとはあのp379、やりたい放題だなっていうか、ああいうことができるなら、この人は安心だなと思いました 笑
そしてあの人は、やられっぱなしだろうなと 笑
(ネタバレ防止にふわっとした書き方をしております)
……なのになんで、あの『ローズガーデン』~?!
気持ち悪いキャラ描写も、うまい~
タキの兄の仁の幼稚なところとか、中央署の市川刑事の横柄なところとか、気持ち悪くていや~なやつの描写がうまいですね!(イヤー!)
ミステリーとして:とにかく読後感がいいし、村善いいやつだからぜひ読んで!
本作に出てくる「草加次郎」事件は、実在の未解決事件。
(被害に遭った方々、お気の毒です……)
フィクションとして、大胆に想像を膨らませて事件や犯人像を作り上げたこの作品、説得力がありました。
事件の根底にある問題は、作中から60年以上たった今も続いているのが辛い。
歌舞伎町の家出少年少女が薬物依存なんて、現代と完全一致。
それはそれとして、
作品全体でみると、
- 村善にまつわる大小さまざまな事件が同時に発生して、謎の筋道が追いにくかったり、
- 偶然が多すぎたり(〇ナンか〇田一君な 笑)
という部分はありましたが、面白かったから全然許容範囲です 笑
ひどくて悲しい事件なんだけど、
- それを追いかける村善とまわりの人間のドラマがアツいし、
- 真相は意外だし、
- 謎解きはかっこいいから!
そして、
とにかく読後感がいいから!
シリーズ本編とはほぼ関係ありませんが 笑、みんなぜひ読んで!
「水の眠り 灰の夢」こんな方におすすめ
- 青春ミステリーが好きな方(と書いたけど、29歳って青春に含まるのだろうか?)(でもめっちゃ青春)
- ハードボイルドが好きな方
- 熱い人間ドラマが好きな方
- 村野ミロシリーズファン(特に、村善ファンと、ミロの出生の秘密に興味のある方)
- 桐野夏生ファン
※作中、こちらの作品への言及があります。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
みなさま、どうぞ楽しい物語体験を ♪
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