「わたし」の同居人である若きC・オーギュスト・デュパンは、すぐれた観察力と分析力を発揮して――。
1841年に発表された、世界初のミステリー。
世界で初めて書かれた推理小説
本書の特徴は、なんといっても史上初の推理小説ということ。
1841年、著者が32歳のときにアメリカで発表されています。
1841年のアメリカっていったら、南北戦争の20年も前。スカーレット・オハラもまだ生まれてない時期ですよねー。
著者のポーは、1809年アメリカ北部ボストン生まれ。リッチモンドやニューヨーク、イギリスのロンドンなど移動を重ね、1849年に40歳で亡くなっています。
その作品は、母国アメリカよりもフランスで高く評価されたそうです。
実はわたし、名前のせいか勝手にフランス人作家というイメージを抱いていました。(ポーごめん~)
「モルグ街の殺人」あらすじ
18▲▲年、主人公の「わたし」は若いフランス人紳士C・オーギュスト・デュパンと知り合い、趣味が合う彼をパリ郊外の自宅に住まわせています。没落した名家の出身であるデュパンは、経済的に困っていました。
観察力と分析力・想像力に長けたデュパンは、ときに「わたし」の考えていることを当ててみせます。
そんなある日、恐ろしい事件が起こりました。
パリのモルグ街でふたり暮らしをしていた母娘が、残虐な方法で殺されたのです。
娘のカミーユは、自宅の鍵のかかった4階の部屋で、身体を煙突の中に突っ込まれた状態で発見され、首には絞められた跡がありました。
母親のレスパネー夫人は、同じ自宅の裏庭で、首を切断され身体を切り刻まれた姿でみつかります。
部屋の床には金貨や宝石がまき散らされ、暖炉の上には引きちぎられたとおぼしき血のついた髪が残されていました。
ふたりの遺体が発見される直前に、現場付近で何人もが、しゃがれたフランス語の男性の声と、甲高い、あるいはざらざらして聞こえる何語かわからない声による、言い争いを聞いています。
しかし、部屋は密室状態だったにもかかわらず、犯人はどこにもみつかりませんでした。
母娘は仲が良く、召使いも屋敷によく出入りする人もいませんでした。
金に困ってもおらず、事件の3日前には銀行口座から大金を引き出していて、その際に担当した銀行員が警察によって逮捕されましたが、証拠はありません。
新聞で事件を知った「わたし」とデュパンは、現場を調べる機会を得て調査に赴きます――。
「モルグ街の殺人」感想
「モルグ街の殺人」”衝撃の犯人○○”
現代のミステリーで、殺人を犯したのがこの○○ってことにしたら、読者に怒られそうですよね……。(○○は便宜上の表現であり、実際の文字数とは関係ありません)
被害者たちを殺害した○○が、遺体を煙突に突っ込んだりした理由も独創的でした。
なお、この○○に関する記述は終盤まで出てこないので、読者が”犯人”を当てるのは不可能です。(さらり)
推理小説のスタイル確立
解説でも同様のことが述べられていますが、世界初のミステリーにしてすでに、
・観察と分析にすぐれた変わり者の探偵役が
・仕掛けを施して、平凡な相棒の前で鮮やかに謎を解き
・得々と説明する
っていう名探偵のスタイルが出来上がっていることに驚きました。
あと、密室殺人と、意外な犯人っていうお約束も。
「モルグ街の殺人」こんな人におすすめ
これはもちろん、世界初のミステリーを読んでみたい方へ!
実はこの作品、子どもの頃初めて読んだときは、もっとわかりにくかったイメージがありました。
訳が古かったせいか、おどろおどろしい雰囲気がやたら強調されてる感じがあって。
(とはいえ新訳でも、朝っぱらから鎧戸を閉め切ってろうそくの灯で夜ごっこ楽し~♪、とか、中二ごころ刺激されすぎっていうか、君らはいったい何をしとるんだっていう気にはなりますが 笑)
でも、今回手に取ってみたところ、意外とさくさく話が進んでいて、読みやすかったです。
といいつつ、デュパンが登場するまでの最初の6ページほどは、「分析力とはなにか」みたいな話が続いて正直読みにくいですが、そこからはほんとにもう、さくさくなので。(2回目 笑)
短いお話ですし、どこかで”衝撃の犯人”のネタバレ事故に遭う前に、ぜひ!
次回は、ポーの人気作『黄金虫』と『黒猫』を取りあげます。
よろしければ、またお越しくださると嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
みなさま、どうぞ楽しい読書体験を♪