前作はこちら ↑
小説「バスカヴィル家の犬」あらすじ
1889年の秋、ホームズのもとへ、モーティマーという医師が訪れます。
彼の住むデヴォンシャーのバスカヴィル家には、日没後に巨大な黒い魔犬がムア(荒れ地)に現れて、一族を襲うという伝説がありました。
そして実際、数か月前に、当主のチャールズ・バスカヴィル准男爵が、伝説とよく似た状況で不審な死を遂げたのです。
モーティマー医師はホームズに、チャールズの莫大な遺産の相続人である甥のヘンリーが、一族の館に移り住んでも大丈夫だろうかと相談します。
翌日、遺産相続のためにアメリカから帰国した若いヘンリーを連れて、モーティマー医師がふたたびやってきます。
ヘンリーは前日から滞在しているロンドンのホテルで、買ったばかりのブーツを片方盗まれたばかりか、何者かによる脅迫状のような手紙まで受け取っていました。
ホームズはヘンリーを尾行し、彼のあとを尾けていた不審な男を発見しますが、男は容貌がわからないように変装していた上、逃げてしまいます。
危険な状況を知ってもデヴォンシャーのバスカヴィル館に住むといいはるヘンリーに、仕事の都合で今はロンドンから離れられず、自分は彼に付き添えないと答えたホームズは、かわりにワトソンが館へ同行することを提案。
「それでなくともわたしは冒険の予感にいつもわくわくしてしまうのだが、そこへもってきてホームズからはうれしいことば、准男爵からはいっしょに来てほしいという熱心な誘いだ。」
と、ノリノリで( 死語? 笑)バスカヴィル館に乗り込んだワトソンですが、底なし沼まであるような陰気な土地で緊張した毎日を送るうちに、様々な事件が――。
小説「バスカヴィル家の犬」制作秘話と感想
「バスカヴィル家の犬」制作秘話:原作者?ロビンソン
解説によると、この本には下記の謝辞が付いていたそうです。
「親愛なるロビンソン君へ
この物語の発想を得られたのは、きみが教えてくれたイングランド西部地方の伝説のおかげです。そのことと、詳細部分に関するきみの手助けに対して、ここに謝意を表します。
心より
ヘイズルミア、ハインドヘッドにて
A・コナン・ドイル」
この「ロビンソン君」というのは、バートラム・フレッチャー・ロビンソンというジャーナリスト兼作家のこと。
彼がダートムアの自邸にドイルを招き、魔犬の伝説を教え、現地を案内したのだとか。
ただし、本作『バスカヴィル家の犬』の執筆にどこまで彼が関与していたのかについては、様々な説があるそうです。
「バスカヴィル家の犬」感想
荒れ地の魔犬の伝説(バスカヴィル家、「こんな先祖はイヤだ」選手権優勝だわ……)や、古くて暗い屋敷をロウソク片手に深夜の追跡、などなど、ホラー風味が強いこの作品。
前にもお伝えした通り、わたしは怖がりでホラーが苦手なので、心配していたのですが、思いのほか面白く読めました。
ていうか、魔犬怖いけど、化け物としての怖さというより、
子どもに何かあったらどうすんだ。
害獣!
領主、さっさと対策して!
登場人物の性格が、これまでのシリーズ作品に比べるとリアルな印象を受けました。
一度で成功しなくても諦めずに、悪事の工夫を重ねる犯人とか。
あの犯人、頭もいいんだし、あの頑張りを他のことに活かしてたらなー。
そして、ホームズに騙されて最初はめちゃくちゃ怒ってたのに、あっという間になだめられちゃうワトソンの安定のかわいさ 笑
解説によると、『シャーロック・ホームズの冒険』以来シリーズ作品を掲載してきた『ストランド』誌は、『最後の事件』以後売れ行きが落ちこんでいたそうです。
それが、空白の8年を経てこの作品が掲載されたところ、月刊誌なのに7刷するほど売れたとか。
もちろん、単行本もバカ売れ。
巻末の島田荘司のエッセイでは、レジェンドミステリー作家だけあって、様々な「ホームズ」作品へのつっこみがかなり辛辣 笑
読んで、ちょっと島田先生のこと好きになりました 笑
ドラマ「バスカヴィルの犬(ハウンド)」あらすじ(BBC「SHERLOCK/シャーロック」シーズン2第2話)
ドラマ「バスカヴィルの犬」感想
ヘンリーにモーティマー医師、ダートムアにグリンペンなど、原作の登場人物や土地の名前などが、ちょっとずつ設定を変えて出てくるのが楽しかったです。
シリーズの他の作品の小ネタもたくさんありました。
ダートムアで巨石に登ってあたりを見渡すホームズの姿が、原作の挿絵にもなっているあるシーンとそっくりでニヤニヤ 笑
あの名言「不可能を消去して残ることが何であれ真実だ」や、「感情ってやつは」のくだりが、え、ここで出る? というシーンで出てくるのにもくすりとさせられます。
ただ、ラストは正直、このドラマにしては安直な処理ではないかなと思ったり……。(ハードルを上げるファン)
また、犯人やトリックについては、こういうパターンもあるのかーと。
これまでに紹介した「ピンク色の研究」や「ベルグレービアの醜聞」の回では、原作との関係である程度予想がついたんですけどね。
そして、全体的に、
・宿ではいつものようにホームズとカップル扱いされ、
・ホームズからは話のついでに、同じ頭でも君のと僕のではまるで能力が違う(!)的なことを、しゃらっといわれたり(ここはスルー)
・同じくホームズから、「僕に友だちはいない」といわれたり(ここはかなり傷心)
・同じくホームズから、無断でとある人体実験をされたり(ここは怒ってあたりまえ)
と、相も変わらずワトソンが不憫なのでした 笑
次回予告
さて、「ホームズ」シリーズの次回はついに、「滝」の続きを!
第6作短編集『シャーロック・ホームズの生還』と、「滝」から直接続く第1話『空き家の冒険』を紹介します。
またおつきあいいただけたら嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
みなさま、どうぞ楽しい物語体験を♪