短編集「シャーロック・ホームズの冒険」と、第2話「赤毛組合」~「ホームズ」シリーズの大人気作~

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 今回は、3つ前の記事 ↓ の続き。「ホームズ」シリーズの3回目になります。

 
 光文社文庫『シャーロック・ホームズの冒険』を紹介し、収録作の第2話『赤毛組合』について、あらすじと感想を書きました。
 
 長くなりましたので、下の目次から興味のある項目に飛んでくださいね。
 
 
 
 

短編集『シャーロック・ホームズの冒険』

 今回取り上げる『シャーロック・ホームズの冒険』は、コナン・ドイルの書いた「ホームズ」シリーズの第3弾。

 

 長編『緋色の研究』『四つの署名』に続き、1892年に発行された初めての短編集です。

 

 収録された12の短編は雑誌に掲載されていた頃から人気を呼び、それらがまとめられて短編集として出版されてからは、イギリスだけでなくアメリカでもファンが生まれるほどのブームを起こしたとか。

 

 以前の記事 ↓ では、この短編集の中でも特に評価の高い第2話『赤毛組合』を、ホームズ作品を初めて読む方におすすめしました。

 

 ただし、その他の収録作も、読みごたえのあるものばかり。

 さすが、有栖川有栖の推す「ミステリファン必読の短編集ベスト3」ですねー。

 

第1話『ボヘミアの醜聞(スキャンダル)』

 ホームズのもとを訪れた、とある国の高貴な依頼人と、ホームズにとって特別な「あの女性」の話。

(って伏せましたが、タイトルでバレバレだ 笑)

第2話『赤毛組合』:あらすじ・感想は次の項目で

 次の項目であらすじ・感想をまとめたので、そちらをご覧ください。

第3話『花婿の正体』

  結婚式の直前に姿を消した花婿。依頼人の花嫁に、ホームズは――。
 
 あっと驚く、というより、気分の悪い話でした。
(ミステリーって犯罪のお話なので、基本気分の悪いことが起こるものですが 苦笑)
 
 そして、河出文庫の「訳者あとがき」を読むと、かなり複雑な気持ちになる一編でもあります。
(創作物に作者の無意識が表れることはあるでしょうけれど、そこまで詳しい事情を知ってしまうと、読んじゃっていいのかな、これ? って気持ちに……)

第4話『ボスコム谷の謎』

 父親を殺したと思われている青年と、彼の無実を信じる幼馴染の女の子。
 
 周囲が思っていたのとは違う人間関係、という部分は面白かったけど、犯行があれほどうまくいってしまった理由を、もう少し説明してほしかった。

第5話『オレンジの種五つ』

 奇妙な脅迫を受けて死亡した伯父をもつ青年。父親も同様に亡くなったあと、自分にも脅迫状が届いた彼は、悪天候の夜ホームズに相談をしにやってきて――。
 
 ワトソンによると、
謎の一部分しか解明されず、彼(とらじ注:ホームズのこと)があれほど重要視する論理的・絶対的な証拠ではなく、憶測や推量でしか説明のつかない事件
 
 海の向こうとはいえ、この時代にこんな作品書いちゃってドイル大丈夫? と、ちょっと心配になったりしました。(その後も無事だったらしいので大丈夫だったのでしょう)
 
 そんな心配を吹き飛ばす、p189の
ぼくにはきみのほかに友だちはいないよ
 というホームズのセリフの破壊力よ 笑

第6話『唇のねじれた男』

 幼い息子と妻を残して失踪した、よき家庭人だった夫。彼を探してホームズはアヘン窟へ赴きますが――。
 
 問題のあれ、やめられないって聞いたことがあります。
 とはいえ、現代の日本では状況が違いますね。
 
 映(ば)えるシーン山盛りで、映像化してほしい作品。

第7話『青いガーネット』

 落とし主不明の、古いフェルトの帽子と食用ガチョウ(そういう時代なんですね)
 拾った人が食べようとさばいたガチョウの餌袋から、とんでもない宝石がみつかり――。
 
 意外なきっかけでホームズが謎に巻き込まれる、完成度の高い作品。
 ガチョウには悪いけど、絵面がちょいちょい笑えます 笑

第8話『まだらの紐(ひも)』

 人気投票でいつも上位にくるらしい人気作。

 

 人気作すぎて、現代日本の人気小説にもマニアックな形で登場 笑

 直木賞おめでとうございます

 

 双子の姉の不審な死と、死ぬ直前に残した「まだらの紐」という言葉。その後、姉が聞いたのと同じ奇妙な口笛を耳にした女性は、助けを求めてホームズの元にやってきて――。

 

 依頼人の義父のキャラがリアルすぎ・強烈すぎ。

 女性としては、こんな時代に生まれなくてよかった~! と痛感。

第9話『技師の親指』

 医師であるワトソンのもとへ連れてこられた、大ケガをした青年技師。(想像するだけで痛い……)

 

 短編なのに手に汗握るサスペンス。うまい!

 馬車のトリックが印象的でした。

第10話『独身の貴族』

 公爵の次男との結婚式の直後、披露宴の最中に失踪した花嫁。

 

 この種の「過去」の話って海外ミステリーによく出てきますね。コンパクトにまとまった作品です。

 

 そりゃ、一緒に夕食は無理だよ 笑

第11話『緑柱石の宝冠』

 大銀行の頭取の屋敷で、借金の担保に預かった緑柱石の宝冠から宝石が盗まれた。容疑者は放蕩息子。

 

 p478のホームズのセリフは、有名なやつですかね。

ぼくは以前から、ひとつの信条をもっていましてね。まったくありえないことをすべて取り除いてしまえば、残ったものがいかにありそうにないことでも、真実に違いないということです

 

 たしかに、「英国を一大スキャンダルから救った一日」だなあ。

 

 いや、借金のかたに冠はやめとけってー、借りる方も貸す方も 笑

第12話『ぶな屋敷』

「ぶな屋敷」と呼ばれる家で住み込みの家庭教師になった若い女性が、高給のかわりに奇妙な条件を課され――。
 
 この時代でもすでに、家庭内の犯罪や、近所の目や耳が届かない田舎の危険性について、言及されていることに驚きました。まあ、逆の干渉も辛いですけどね。
 
 ヴァイオレット・ハンター嬢、推せる!

第2話『赤毛組合』あらすじ

 燃えるような赤毛の年配男性・ウィルスン氏が、ホームズのもとを訪れます。

 

 質屋を営む彼は、従業員の男性に教えられた「赤毛組合員募集」なる新聞記事を読んでためしに応募してみたところ、応募者が殺到していたなかで運良く採用されました。

 

 なんでも、組合では赤毛の人間を保護したいとかで、月曜日から土曜日の午前10時~午後2時に百科事典を紙に書き写すだけで大金が支払われるという、なんともおいしい仕事です。

 

 ただしその間、建物から外に出たら即刻クビという条件もついていますが、働き者の従業員がその時間はひとりで質屋の店番をしてくれることになり、ウィルスン氏はめでたく赤毛組合のメンバーとなったのでした。

 

 まじめに赤毛組合に通い、毎週末ほくほくと大金を受け取っていたウィルソン氏でしたが、8週間が過ぎたある日、出勤するとオフィスのドアに「赤毛組合は解散した」という紙が貼られていて、雇い主も行方知れず。

 

 納得いかないウィルソン氏は、ホームズのもとを訪れますが――。

 

第2話『赤毛組合』感想

 引き締まったいい小説だなー、というのが、今回最初の感想でした。

(再読なので。初めて読んだときは、もっと中身のことをあれこれ考えたと思います 笑)

 

 まず、「赤毛組合」のトリックがいいですよね。どの時代のミステリーでも使える、オールマイティなやつ。

 

 そしてあのセリフ。

それからワトスン、ちょっとばかり危険かもしれないから、軍用拳銃をポケットに入れてきてくれたまえ

 

 しびれますよねー! 

 

 ちょっとホームズ! びっくりしちゃってるじゃんワトソン! 笑

 

(作品中では「ワトスン」という表記ですが、わたしの感想等ではこれまで通り「ワトソン」とします。慣れているので 笑)

(でも、考えてみたらわたしも、口に出したときの音は「ワトスン」だ 笑)

 

 その他、ワトソンとホームズが思わずふき出して依頼人がキレる場面なんかも、うまいなあと思いました。

 

 ホームズものって、ホームズがあまり感情を表さないこともあって、登場人物の細かい感情の動きにはふれないイメージがありましたが、案外かきこまれていたんですね。

 さっきの「拳銃」のくだりでの、ワトソンのもやもやも 笑

 

 文庫本でわずか42ページの中に、不思議だったりくすっとしたり、どきどきハラハラ、あるいはコンサートで音楽にうっとりしたりと、多彩なシーンがぎゅうぎゅうに詰まっていて、再読とはいえ引き込まれました。

 いやー、いいお話でした。

 

 

 さて、次回はついにシリーズ第1作(やっと……笑)、『緋色の研究』をご紹介します。

 今回の記事で、「ホームズもの、面白そう」と思ってくださった方は、ぜひおつきあいいただければと。

 

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 どうぞみなさま、楽しい物語体験を♪