\短編『最後の挨拶』はこちら/
- 短編集「シャーロック・ホームズの事件簿」各話ざっくり紹介
- 「まえがき」(雑誌『ストランド』1927年3月号掲載)
- 第1話 「マザリンの宝石」(同1921年10月号掲載)
- 第2話 「ソア橋の難問」(同1922年2~3月号掲載)
- 第3話 「這う男」(同1923年3月号掲載)
- 第4話 「サセックスの吸血鬼」(同1924年1月号掲載)
- 第5話 「三人のガリデブ」(同1925年1月号掲載)
- 第6話 「高名な依頼人」(同1925年2~3月号掲載)
- 第7話 「三破風館」(同1926年10月号掲載)
- 第8話 「白面の兵士」(同1926年11月号掲載)
- 第9話 「ライオンのたてがみ」(同1926年12月号掲載)
- 第10話 「隠居した画材屋」(同1927年1月号掲載)
- 第11話 「ヴェールの下宿人」(同1927年2月号掲載)
- 第12話 「ショスコム荘」(同1927年4月号掲載)
- 「シャーロック・ホームズの事件簿」感想とこんな方におすすめ
- 次回予告

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短編集「シャーロック・ホームズの事件簿」
各話ざっくり紹介
「まえがき」(雑誌『ストランド』1927年3月号掲載)
この短編集の中に、最終巻を意識させるタイトルのついた作品はないものの、
巻頭には作者コナン・ドイルによる「まえがき」が置かれ、これが最後のホームズの本になると述べられています。(寂しい……)
作品のネタバレ防止に詳細は伏せますが、
自身のとある行為について、
「わたしはまったく後悔していない」
と書かれていたのが嬉しかったです。
(じゃあなんで、あのあとも何度m)(自粛)
第1話 「マザリンの宝石」(同1921年10月号掲載)
盗まれたダイヤモンドを取り返そうと、ベイカー街221Bの窓際に
(前にもやったように)自分にそっくりな人形を用意し、ひとりで敵を待ち受けるホームズ。
やがて、危険な敵とその手下が現れ――。
解説によると、作者ドイルは前作『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』最終話の、
短編『最後の挨拶』(1917年発表)でホームズものを終えたつもりでした。
しかしその後、ストール社の作ったホームズもの映画を観て感激。
みずからも、
『王冠のダイヤモンド――シャーロック・ホームズとの一夜』という劇の脚本
を書きます。(初演は1921年5月)
それがタイトルを変え、小説に書き換えられたのが、
劇と同じ1921年に発表されたこの短編『マザリンの宝石』
かくして、「ホームズ」シリーズはまたしても再開したのでした 笑
\本作の名言がプリントされたトートバッグ!/
“I AM A BRAIN, WATSON.
THE REST OF ME IS A MERE APPENDIX.”
「ぼくは頭脳なんだよ、ワトスン。ほかの部分はただの付け足しだ」
ホームズものには珍しい、三人称で書かれているのも特徴です。
(シリーズの三人称の作品は、この作品と短編『最後の挨拶』だけ。
また、ホームズの一人称作品は、後述する第8話『白面の兵士』と第9話『ライオンのたてがみ』だけ。
残りはすべてワトソンの一人称で書かれています)
第2話 「ソア橋の難問」(同1922年2~3月号掲載)
石造りのソア橋のすぐそばで、大富豪の妻が撃たれて死んでいるのがみつかります。
凶器と思われる銃がみつかったのは、雇い主の大富豪に言い寄られていた若い家庭教師女性の部屋のタンスの中。
遺体の手は、家庭教師が書いたソア橋での待ち合わせ時間を指定する手紙を固く握りしめていて――。
単純なだけに実行しやすそうな、リアルな印象のトリックでした。
第3話 「這う男」(同1923年3月号掲載)
有名な教授の娘とその婚約者から、教授の様子がおかしいと相談を受けたホームズとワトソン。
研究は好調、プライベートでも若い女性と再婚予定の教授ですが、このところ雰囲気が変わり、夜中に異常な行動をするようになりました。
しかも、なついていた愛犬が彼に襲いかかるようになったのです。
教授の家を訪問したふたりが見たものは――。
医師ドイルのトンデモ科学が炸裂する異色の作品です。
第4話 「サセックスの吸血鬼」(同1924年1月号掲載)
速報:ワトソン、ラグビー経験者とのこと!
とある法律事務所経由で、ホームズに変わった依頼が入ります。
ペルー出身の妻が
・先妻の子で背骨に障害のある息子をひどく叩き
・自分の生んだ赤ん坊の首から血を吸った
という相談で、
依頼人はワトソンの古い知り合い(ラグビーのライバルチームのスター選手)です。
家族と会い、赤ちゃんの傷を観察したホームズはーー。
第5話 「三人のガリデブ」(同1925年1月号掲載)
アメリカ人弁護士ジョン・ガリデブが、ベイカー街のホームズとワトソンのもとへ。
彼がコレクターであるネイサン・ガリデブ氏とふたりで行っている人探しについて、ネイサンが彼に断りもなくホームズに協力を依頼したと知り、この件を警察には黙っておくようわざわざいいにきたのです。
ジョンの話によると、
同姓の富豪の遺言により、
同じガリデブ姓の成人男性をあと2人みつけて3人になったら、富豪の遺産をそれぞれ1/3ずつ相続できるため、
コレクターのネイサンと一緒に3人目を探しているということ。
ホームズファンなら気づきやすそうなトリックですが、理由が独創的で面白かったです。
第6話 「高名な依頼人」(同1925年2~3月号掲載)
極悪非道の貴族・グルーナー男爵に騙されて、周囲の反対に耳を貸さず彼と結婚しようとしている令嬢。
(途中、男爵のことを調べていたフランス人探偵ル・ブランが暴力組織から袋叩きにされたエピソードが出てきます)(悪いわードイル 笑)
結婚を阻止するため、ホームズは一計を案じますが、相手の襲撃でひどいケガを負います。
ホームズの選んだ方法に、
「なるほど、それならさすがの令嬢も目が覚めるかも」
と感心しました 笑
第7話 「三破風館」(同1926年10月号掲載)
221Bに押し入ってきた黒人の巨漢に、依頼されたばかりの事件から手を引くよう脅されたホームズ。
かえって事件に興味がわいたホームズは 笑、ワトソンと共に依頼人のメイバリー夫人の住む三破風館へ向かいます。
屋敷に住んで1年あまりになる老夫人に、家具や細々としたものすべてを含めて家を売ってほしいという奇妙な申し込みが。
その後、屋敷に強盗が入って――。
こういう決着の付け方でいいの? とモヤモヤしましたが、思い出の品にこだわらないあっさりしたおばあさんらしいので、それはそれでアリなのかも。
第8話 「白面の兵士」(同1926年11月号掲載)
珍しいホームズの一人称。
ボーア戦争が終わったばかりの頃のこと。
戦友が実家で父親に軟禁されているのではないかと疑う青年の依頼で、ホームズはある男性を連れて依頼人と3人で屋敷を訪れますがーー。
謎解きパートで、可能性は3つしかなかったとされていますが、他の疑いもあったはず、というか、むしろ読者はそっちが気になっていたのでは? と思いました。
第9話 「ライオンのたてがみ」(同1926年12月号掲載)
ホームズの一人称第2弾。
嵐の去ったある朝、海に泳ぎに出かけた男性が、海岸から戻る道で「ライオンのたてがみ」といい残して急死しました。
遺体の背中にはひどい傷が。
このパターンは、新しいのでは✨
謎解き場面まで直接的な手がかりは明かされないので、真相を具体的に当てるのは難しいけれど、可能性を思い浮かべた人は多そうです。
第10話 「隠居した画材屋」(同1927年1月号掲載)
退職後に結婚した20歳年下の妻と若い友人に、財産と共に駆け落ちされたという、画材会社の元経営者の依頼。
ホームズのかわりにワトソンが彼の屋敷に行きますが――。
凶器が意外でした!
第11話 「ヴェールの下宿人」(同1927年2月号掲載)
ワトソンによると、「ホームズらしい出番がほとんどなかった」、「やりきれない人間の悲しさがつきまとっている」事件。
顔に「ヴェール」をつけて家に引きこもっている女性から、過去の悲惨な事件の話を聞いてほしいと頼まれるホームズ。
彼女とホームズの心暖まる交流も。
とはいえ、もしも犯罪が成功していたら、ホームズの態度は全然違ったんだろうなと 笑
第12話 「ショスコム荘」(同1927年4月号掲載)
悲報:ワトソン、軍人恩給のおよそ半分を競馬につぎ込んできたことが判明 笑
夫の遺したショスコム荘に住む未亡人レディ・ビアトリス・フォールダーと、その兄で屋敷に居候しているサー・ロバート・ノーバートン。
ふたりの奇妙な行動について調べるよう、ホームズが依頼されます。
ショスコム荘には競馬の調教場等があり、なにかと競馬の話が。
とにもかくにも、ギャンブルでの一発逆転を狙うのはいかがなものか 笑
妹の愛犬を勝手に人に譲ったり、納骨堂で夜中に何かしたりするサー・ロバートに、まさか……と思いながら読み進めたら、そのまさかでした 笑
この短編を書いた3年後に、作者アーサー・コナン・ドイルは永眠しました。
「シャーロック・ホームズの事件簿」感想とこんな方におすすめ
狭義のミステリーからは外れるかもしれませんが、第6話『高名な依頼人』での、どうやって令嬢を説得するか? という解決策が面白かったです。
12の短編全体に、以前の作品に比べると勢いには欠けるものの、事件の内容はバラエティーに富んでいます。
シャーロック・ホームズが1887年に世に出てから、すでに30年以上たっていたにもかかわらず、作者がそれまでにない新しい作品を描こうとしたことがわかります。
シリーズ最終作、しかもホームズの一人称など珍しい作品も多いとあって、ホームズファンには見逃せない短編集です。
ただし、「まえがき」を除くと最終作っぽさは特にありません 笑
最後に、作者ドイルによる「まえがき」のラスト2文を。
「そんなわけで読者諸君、今度こそほんとうにシャーロック・ホームズとお別れするときがやってきた。これまで長いあいだのご愛読に感謝するとともに、みなさんが日常の煩わしさから解放されて気分転換する一助に、この冒険物語がなったことを願うのみである。
アーサー・コナン・ドイル」
次回予告
次回は「シャーロック・ホームズ」作品記事の最終回。
- これまでのホームズ作品全13記事を一覧にまとめ
- ドラマやおすすめサイト・書籍・グッズなどを紹介します。
またおつきあいいただけると嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
みなさま、どうぞ楽しい物語体験を♪
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