「犬のお告げ」「ムーン・クレサントの奇跡」(短編集「ブラウン神父の不信」)G・K・チェスタトン

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 今回は、ブラウン神父の短編集の第3弾『ブラウン神父の不信』から、評価の高い2作品を紹介します。

 

 本当は、前回・前々回のように、BBCドラマ「ブラウン神父」と比較する形で紹介したかったのですが、

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 残念ながら、今回取り上げる2編を原作にした回がみつからず。なぜー?

 

 今後みつけられたら、別途紹介するかもしれません。

(なんだかぐだぐだですみません 笑)

 

 

■目次■

「ブラウン神父」シリーズ第3弾
「ブラウン神父の不信」

 

 
 シリーズ第1弾『ブラウン神父の童心』(1911年発行)、第2弾『ブラウン神父の知恵』(1914年発行)に続く、ブラウン神父の短編集第3弾です。
 
 原題は”The wisdom of father Brown”、発行は1926年で、なんと前の巻から12年のブランクがあります。
(第一次世界大戦もありましたしねえ……)
 
 解説の法月綸太郎によると、このブランクの間に、探偵小説の主流が短編から長編へと移っているそう。
 
 ちなみに同じ年に発表された有名作品は、『アクロイド殺し』(アガサ・クリスティー)や『ベンスン殺人事件』(ヴァン・ダイン)など。

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 翌1927年4月には、コナン・ドイルによるシャーロック・ホームズシリーズも終了するなど、当時ミステリーを取り巻く環境は変化しており、この『ブラウン神父の不信』もそれを反映しているとのこと。
 
 また、この本に収録された第1話『ブラウン神父の復活』と、最終話『ギデオン・ワイズの亡霊』は、シャーロック・ホームズ作品を皮肉ったものだそうです。

 解説ではそのあたりについて詳細に述べられているので、シャーロック・ホームズに関するネタバレは極力避けたい! という人は、本書の解説を読む前にホームズ作品を読んでおくことをおすすめします 笑

(なんかこういう感じのこと、前にも書いた記憶が 笑)

「犬のお告げ」

「犬のお告げ」あらすじ

 ブラウン神父のもとに、「見えない殺人事件」について知恵を借りたいと、ファインズという青年がやってきます。


 ヨークシャー海岸にあるドルース老大佐の屋敷に、大佐の息子の友人であるファインズが滞在していたときのこと。
 庭の東屋で、大佐が背後から刺殺されるという事件が起こりました。

 

 東屋に一つだけついていた入り口は、事件のあった時刻、複数の人々の視界に入っていました。
 にもかかわらず、犯人を目撃した人はおらず、凶器もみつかりません。

 

「なかでもいちばんきてれつなのが問題の犬なんです」

 事件の際のドルース家の飼い犬ノックスの態度に、オカルトめいたものを感じているファインズ青年。
 話を聞いたブラウン神父は――。

 

 1923年発表の第3話。
 ブラウン神父の作品では珍しい、現場に行かず人や書物から得た情報だけで神父が推理する、安楽椅子探偵スタイルの作品です。

「犬のお告げ」感想

 短い作品の中にいくつもの鮮やかなトリックが入っていて、ドラマティックで面白かったです。


 これは映像化したい人多いだろうなー、と思ったけれど、ドラマ「ブラウン神父」でこの作品を原作にしたものはみつからず。


 とはいえ、見落としていたらすみません。
 なにせ、Amazonプライムで観られる分だけでも、現在10シーズン、合計110話もあるんです。

( ↑ 人のせいにした 笑)

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 ただ、描写がないせいで、少々わかりにくく感じる部分もありました。

 たとえば、ドルース家の犬とファインズたちが海で遊ぶシーン。沖に向かって物を投げて、「とってこーい」ってやるところ。

 

 あれは、人間が砂浜から海になにか物を投げて、それがぷかぷか水に浮かんでいるのを犬が泳いで取りに行って、くわえて砂浜に戻って人間に返して、それを人間がまた投げる、っていう遊びなんですね。

(石を投げて拾わせたというエピソードとまとめて書かれていたので、もっと浅いところで遊んでいたのだと最初は勘違いしました)

 

 緑豊かな庭とか、夕暮れの海岸で大型犬と遊ぶ若者たちとか、結婚とか遺産相続とか。
 ブラウン神父ものでは珍しく、こう、若々しいフレッシュな感じ?笑 のシーンが詰め込まれたお話です。(それなのに、犯人め~)

 

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「ムーン・クレサントの奇跡」

「ムーン・クレサントの奇跡」あらすじ

 1924年発表の第4話。

 舞台は、アメリカ東部にある「ムーン・クレサント」という古い高層ホテルの、14階の一室です。

 

 部屋の主、ウィンドというやり手の小柄な実業家男性は、大富豪ヴァンダムの相手をしていましたが、いつものように自分のペースで手短に用件を終えます。

 

 このあと30分間は面会謝絶にするというウィンドにより、ヴァンダムだけでなく、ウィンドの秘書と世話係も部屋から追い出されます。
 気分を害した大富豪と秘書のフェンナーが部屋のそばで立ち話をしているところに、アルボインという別の客が面会を求めてやってきますが、秘書は30分たつまでは無理だと彼を主の部屋にいれません。

 

 そこへブラウン神父が現れ、ウィンドの様子を見たいといいます。
 ついさっき、ホテルの外で会った知人の乱暴な男から、ウィンドへの呪いをこめてこの建物の壁にピストルの空砲を撃ったという話を聞いたのが、どうにも気になるというのです。

 

 4人が部屋の中に入ると、なぜか部屋はもぬけの殻でした。
 窓の外には隠れる場所も、飛び降りた形跡もなく――。

「ムーン・クレサントの悲劇」感想

 背表紙で「大胆で奇想天外な密室トリックが炸裂」とうたわれているだけあって、奇抜なトリックに驚きました。

 な、なるほどー。

 

 

 実はわたし、普段は、あまりに大掛かりなトリックに対しては、

「そんなん無理」

「せめて入念なリハーサルしないと無理」

 などと、たいへん面白みのないことを思ってしまうのですが。


 ここまでダイナミックにやられると、逆に感心して納得です。 

 そうだね、これなら破れるね、密室! 笑

 

 解説によるとこちらの作品、荒唐無稽ということで、昔の推理クイズ本でネタにされていたそうです。

 でも、作者チェスタトンは単に大胆なトリックを書こうとしたわけではなく、この作品でアメリカ資本主義をからかっているのだとか。

 

 あと、このトリックの第1段階というか準備、クリスティーの長編でも似たアイディアがありましたよね。
 ていうか、あれはいつの時代でも使える方法ですよね。いろんなバリエーションがありそう。

 

 

 さて、次回は、上でもふれた「シャーロック・ホームズ」シリーズをとりあげます。

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 よろしければ、またおつきあいいただけると嬉しいです。

 

 今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 みなさま、楽しい物語体験を♪