コナン・ドイル(シャーロック・ホームズシリーズの作者)の作品と並び、後世の作家たちに影響を与えたとされる、名探偵ブラウン神父シリーズの第一作。
ブラウン神父シリーズとは
ブラウン神父:見た目はぼんやり、中身は……
ミステリー好きならどこかでその名を目にしたことがあるのではないでしょうか、名探偵ブラウン神父。
その外見は、
↓
小柄で茶色の短髪。
顔は「ノーフォークの団子そっくりにまんまるで、間が抜けており、眼は北海のごとくにうつろ」 笑
片手に大きなこうもり傘。
荷物をしょっちゅう落としたり置き忘れたりしている、見るからに不器用な人ですが、意外と機敏なところも。
ときどき、パイプを吸うシーンがあります。(そして落として割る 笑)
神父さんが探偵ということで、読む前はてっきり、自分の教会で信者の相談に乗りながらいろんな事件を解決する話だと思っていたのですが、実際に読むと、かなりアクティブにあちこち出かけては謎を解決するスタイルでびっくりしました。
しかも、血なまぐさい事件や国際的に暗躍する犯罪者も出てきて、すごくにぎやかです。
「ブラウン神父」シリーズ作者:ギルバート・キース・チェスタトン
作者チェスタトンは、1874年生まれのイギリス人。クリスティーの16歳上になります。
この短編集が発表されたのが1911年で、クリスティーのデビューは9年後の1920年。
というわけで、作者の年齢も、作品の発表された時期も、そこまで離れてはいないふたりですが。
クリスティー作品に比べると、この短編集の地の文はクラシカル。(もちろんスピーディーに話が進む部分もあります)
上品な皮肉とユーモアのある、イギリス人っぽい大人な文章( 偏見?)です。
時間のあるときにゆったり読むと、事件と関係ない場面でもにやにやできて楽しいですよー 笑
いつの時代も、フランス人ってフランス革命をネタにされてるんだなとか 笑
短編集「ブラウン神父の童心」ざっくり紹介
収録された12話のうち、シリーズ最初の話である第1話『青い十字架』から第4話『飛ぶ星』までは、最初に、それも順番に読むのがおすすめ。
そのあとは、好きな順序で読んでも大丈夫だと思います。
というのも、こちらは短編集ながら、シリーズならではのとある展開があり、4話までは先に・そして順に読まないと、その感慨深さが薄まってしまうんじゃないかなと。
ただし、各話は独立したつくりなので(ちょっと昔のことに触れるシーンはありますが)、どれから読んでも内容がわからなくなることはありません。
第1話「青い十字架」
街中でおかしなことが続く、その様子が面白かったです。
第2話「秘密の庭」
そうそうたる登場人物たちにふさわしく、犯行もトリックも大胆というか、派手!
犯行の動機は、現代の読者にはちょっとわかりにくいと思います。
第3話「奇妙な足音」
低予算で映像化できそうな、そうでもなさそうな 笑
第4話「飛ぶ星」 ※ドラマ「ブラウン神父」について追記あり
トリックは鮮やか。
そして終盤のシーンが、タイトルや心情と相まってなんともきれいなんですよね。
この時代の人って、みんなそんなに気軽に劇とかやっちゃうものなの? と素朴な疑問が 笑
【※追記】
その後、ドラマ「ブラウン神父」の同タイトルの回を、ドラマではあの人が原作と全然違うんだけどどうなるのかなー? と思いながら観ました。
結果、メイントリックは同じで、かつ、オリジナル展開がなかなか面白い( えらそう 笑)、といううまい造りに、「ほー、そうきたか!」となりました。
読後感は全然違うんですけどね 笑
第5話「見えない男」
あとの記事で詳しく紹介しましたので、よろしければそちらをどうぞ。
第6話「イズレイル・ガウの誉れ」
犯罪ではない話。
純粋な「謎」解きというか、ある意味「日常の謎」というか、いや違うな、こんな「日常」はいやだ 笑
とにかく、言葉通り・文字通りすぎて、ぞっとする話。
第7話「狂った形」
あちこちで見かけるトリックですが、それにブラウン神父が気づく理由が独特。
犯人が妙に従順というか、なんというか。
第8話「サラディン公の罪」
完全犯罪の話。
タイミングやら何やら、うまくやったなとしかいいようがない印象です。
息子、自業自得ぎみではあるけれど気の毒……。
第9話「神の鉄槌」
こちらもあとの記事で詳しく紹介しましたので、よろしければそちらをどうぞ。
第10話「アポロの眼」
どの時代も、うさんくさい新興宗教とかイケメン教祖と信者とかの問題ってあるんだなー、と思いました。(うさんくさくないのもあるとは思いますが)
エレベーターによる被害といい、太陽を見る(!)話といい、想像しやすいだけに読んでいてなんだか自分の体まで痛くなりました 笑
第11話「折れた剣」
史実を調べたブラウン神父が、「実際にはこういうことが起こっていたにちがいない」と語る、過去の事件を推理する話でした。
ここでそれを引用すると、前回記事との関係もあって何が起きたのかすぐにわかってしまうと思うので、やめておきますね 笑
他の作品と同じく短いお話(文庫本で29ページ)なので、ぜひご自分でご覧ください。
第12話(最終話)「三つの兇器」
これ、ある意味、この本で一番の悲劇だと思う……(涙)次回に続きます
ここまで書いたら、気づけばまあまあの長さになっていたので、一旦区切ることにします。
(いつもながら長文をお読みいただき、ありがとうございます!)
次回、この短編集でわたしが一番好きな、第5話『見えない男』(雑誌発表は6番目)を紹介します。
よろしければ、ぜひ、こちらにもお越しください。(ぺこり)