参加者が自分の知る過去の難事件について語り、残りの面々がその真相を推理し合うという、「火曜クラブ」が発足。
前警視総監など様々な職業を持った男女6人の推理合戦を制したのは、意外にも、目立たない田舎の老婦人で――。
ミス・マープル初登場の第1話を含む、1932年出版の短編集。
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- クリスティー作品の人気キャラクター、ミス・マープルとは
- 短編集「火曜クラブ」構成と、各話ざっくりあらすじ・感想
- 短編集「火曜クラブ」構成について
- 第1話「火曜クラブ」(原題“The Tuesday Night Club”):ミス・マープル初登場作品
- 第2話「アスタルテの祠」(“The Idol House of Astarte”)
- 第3話「金塊事件」(“Ingots of Gold”)
- 第4話「舗道の血痕」(“The Bloodstained Pavement”)
- 第5話「動機対機会」(“Motive v Opportunity”)
- 第6話「聖ペテロの指のあと」(“The Thumb Mark of St Peter”)
- 第7話「青いゼラニウム」(“The Blue Geranium”)
- 第8話「二人の老嬢」(“The Companion”)
- 第9話「四人の容疑者」(“The Four Suspects”)
- 第10話「クリスマスの悲劇」(“A Christmas Tragedy”)
- 第11話「毒草」(“The Herb of Death”)
- 第12話「バンガロー事件」(“The Affair at the Bungalow”)
- 第13話「溺死」(“Death by Drowing”)
- 「火曜クラブ」こんな方におすすめ
- おまけ:短編に特におすすめ! 目にもお財布にも優しい、隙間時間を活かせる読書とは?
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クリスティー作品の人気キャラクター、ミス・マープルとは
この作品の第1話で初めて世に出るミス・マープル(ジェーン・マープル)とは、
「ミステリの女王」アガサ・クリスティーの生んだ、2大人気探偵のひとり。
(もうひとりはもちろん、エルキュール・ポワロ)
こんな感じ ↓ の、なかなか食えないおばあさん 笑 です。
外見
- 高く結い上げて黒いレースのキャップをのせた、白い髪
- お年寄りらしい、うす青い優しそうな目
- しゃんとした姿勢
- レースのあしらわれた黒い服に、黒いレースの指なし手袋(第1話)
表向きの行動パターン
- セント・メアリ・ミード村の、古めかしい家具の置かれた古風な家でひとり暮らし。
- 座っているときは大抵編み物をしている。
- 「小説によく出てくるようなオールドミス」(p176)
- 「ほとんどセント・メアリ・ミードから一歩も出たことがない」(p177)
- ただし、シリーズ後半ではひんぱんに旅行する。
- 自宅のメイドを、本人が一家の主婦になったとき困らないようしっかり教育するが、盗癖などで見限ると、角を立てずにやんわりさっさと解雇する。
- 甥のレイモンドがお気に入りで、彼の作家という職業も自慢の種だけど、さして頭のいい子とは思っていないらしい 笑
- 知人たちとの活発なうわさ話の交換は、習慣を超えてライフワークの域に達している。
実はこんな部分も
- 子どもの頃は、当時としては高い教育を受け、姉と一緒にドイツ人の女性家庭教師をつけていた。
- 病人の看護経験があり、薬物に関する知識がある。
- 庭仕事が趣味で、植物に関する知識がある。
- うわさ話から得た数々のスキャンダルの記憶に、犯人のタイプを紐づけて、事件の真相を推理する。
短編集「火曜クラブ」構成と、各話ざっくりあらすじ・感想
短編集「火曜クラブ」構成について
全13話・3部構成
”The Thirteen Problems”という原題の通り、13の謎にまつわる短編が収録された連作短編集。
以下の(1)~(3)の3部構成です。
(1)第1話~第6話
舞台 ミス・マープルの自宅(暖炉のそば)
参加者(6名)
- ミス・マープル(ジェーン・マープル)
- 甥のレイモンド・ウェスト(作家)
- ジョイス・ランプリエール(女流画家)
- サー・ヘンリー・クリザリング(前警視総監)
- ペンダー博士(老牧師)
- ペサリック氏(弁護士)
(2)第7話~第12話
舞台 バントリー大佐夫妻の自宅(食堂)
参加者(同じく6名)
- ミス・マープル
- サー・ヘンリー・クリザリング
- アーサー・バントリー大佐
- ミセス・バントリー(ドリー・バントリー)
- ジェーン・ヘリア(人気女優)
- ドクター・ロイド(高齢の医師)
(ミス・マープルのファーストネームもこの女優と同じジェーンなので、最初は少し紛らわしかったです 笑
だから作中、ミセス・バントリーとミス・マープルが、他の作品のように「ジェーン」「ドリー」と呼び合わないのかな?)
(3)第13話
それまで(1)(2)で扱った事件とは異なり、
セント・メアリ・ミード村で起きたばかりの殺人事件のお話。
たまたま村に近いバントリー大佐夫妻の家に滞在中だった、火曜クラブメンバーのサー・ヘンリーが、ミス・マープルの推理に基づいて事件を調査することになります。
教科書通りの「安楽椅子探偵」
ミス・マープル本人が事件について語る6話・10話、および進行中の事件に関わる13話を除くと、
残りの9話はすべて、彼女が他人の話を聞いただけで真相を推理する、完全な「安楽椅子探偵」ものになっています。
\「安楽椅子探偵」といえば名前のあがる作品はこちら/
第1話「火曜クラブ」(原題“The Tuesday Night Club”):ミス・マープル初登場作品
ミス・マープルの家に集まった6人が、それぞれの知っている迷宮入り事件を順番に発表し、残りの5人でその真相を推理するという、「火曜クラブ」を発足しました。
トップバッターは、前警視総監のサー・ヘンリー・クリザリング。
ある夜遅く苦しみ始めた、夫婦と妻のコンパニオンの女性の計3名。
症状は夕食のエビによる食中毒と思われ、その内1名だけが亡くなったのですが――。
犯罪が露見するきっかけや、トリックが印象的な作品。
真相に辿りつくには、英語やイギリスの生活習慣に関する知識が必要です。
本作は、1927年に雑誌に掲載された、ミス・マープル初登場作品。
巻頭の「著者のことば」にも、
「この『火曜クラブ』(とらじ注:これは第1話ではなく単行本『火曜クラブ』を指します)で、ミス・マープルははじめて推理小説の世界に登場する。」
という記述があります。
ただし、
本作が短編集『火曜クラブ』(原題は”The Thirteen Problems”)に収録され、出版されたのは、1932年。
その2年前の1930年に、長編『牧師館の殺人』の単行本が出版されているため、
ミス・マープルの初登場は本作ですが、単行本デビューは『牧師館の殺人』ということになります。
第2話「アスタルテの祠」(“The Idol House of Astarte”)
ダートムアの不気味な森の中にある祠で起きた、謎の殺人事件。
複数の人間の前で突然倒れた男性は、胸を刺されていましたが――。
本格ミステリーらしいトリックです。
第3話「金塊事件」(“Ingots of Gold”)
コーンウォールで沈没船の中の金塊を引き上げようとしていた男性が行方不明に。
彼の屋敷に滞在していた作家のレイモンドは、警察と共に怪しい男を調べますが――。
「ジェーン伯母さん」が共犯者に気づくきっかけが面白かったです。
第4話「舗道の血痕」(“The Bloodstained Pavement”)
第3話と同じコーンウォールの、こちらはある古い旅館が舞台の事件。
由緒ある旅館の玄関前でスケッチしていた画家の前で、男女3人の奇妙なやりとりが。
その後、石畳の上に幻覚のような血痕が現れ――。
血痕の理由が衝撃的。
ミス・マープルの有名なあのセリフが出てきます。
「村の生活にだってずいぶんといまわしいことがあるものですよ。この世の中がどんなに悪辣か、あなたがた若い人たちが思い知らされずにすむといいと思いますけれどねえ」
第5話「動機対機会」(“Motive v Opportunity”)
失意の資産家につけこんだ降霊術の霊媒と、すり替えられた遺言状の謎。
こういうトリックが成立することにびっくり 笑
第6話「聖ペテロの指のあと」(“The Thumb Mark of St Peter”)
前半6話の最後の語り手はミス・マープル。
「村の生活が平穏無事だなんて、とんでもない」
「あなたからさんざんぞっとするような話をうかがったあとじゃないですか。このセント・メアリ・ミードにくらべれば、広い世間なんぞ、甘っちょろい、平和なところですよ」
という甥のレイモンドが、ミス・マープルに感化されすぎでおかしい(米花町か 笑)
姪の夫の死にまつわる謎について、現地に乗り込んで調べるミス・マープル。
解くには英語力が必要な謎でしたが、
謎へのアプローチ自体は、汎用性が高いというか、時代も地域も関係なく用いられるアレなので、読みながらミス・マープルと一緒に真相に近づいていく感覚を味わえました。
(だから実際の警察による捜査では、アレをしつこくやるんですかねー)
また、本作、
犯行の動機がめちゃくちゃ厄介なのも特徴的。
なにそれもう勘弁して(頭かかえながら)……、ってなりました 笑
みつかってよかったー、犯人。
タイトルは、タラの黒い斑点のことです。
第7話「青いゼラニウム」(“The Blue Geranium”)
第6話から1年後、舞台はセント・メアリ・ミード村近くにある、バントリー大佐夫妻の屋敷での晩餐会へ。
ミス・マープルとサー・ヘンリー・クリザリングを除く、4人のメンバーも替わります。
この第2部は、わがままで付き添いのナースがいつかない「半病人」の妻が、心霊透視家からの手紙でパニックに陥るお話でスタート。
<(前略)青いサクラソウは警告、青いタチアオイは危険信号、青いゼラニウムは死の象徴……>
またもや当時のイギリスの生活習慣に関する知識が必要な謎ですが、
メイントリックは現代日本の小学生でも高学年以上なら推理できますよ~。
第8話「二人の老嬢」(“The Companion”)
海外旅行中に海で亡くなった40歳くらいの女性と、その連れにまつわる謎。
(現代の読者の感覚を考えると、まだアラフォーで、しかもこの原題なら、和訳の「老嬢」は変えた方が……)
なんとなく最後まで読まされましたが、公的書類とか、どうしたんだろう?
あと、そこまで誰も気づかないことってあるかなあ? 笑
第9話「四人の容疑者」(“The Four Suspects”)
暗殺者に狙われていた博士を殺したのは、4人の容疑者の内の誰だったのか。
またしても、英語力と、とある専門分野に関する知識が必要な謎。
大胆すぎる犯人が面白いです。
第10話「クリスマスの悲劇」(“A Christmas Tragedy”)
ミス・マープルが「水療院」で出会った殺人事件のお話。
愛想のいいサンダーズ氏が、妻のグラディスを殺そうとしていることを確信したミス・マープルは――。
殺害の段取りは、本格ミステリーにありがちな大胆すぎ・うまくいきすぎですが 笑 、なんといっても、
トリックに気づくきっかけが面白かったです!
第11話「毒草」(“The Herb of Death”)
60歳間近の資産家の屋敷で、食事に混ざっていた毒草により、彼が後見人を務めていた若い美女が死亡。
ミステリー頻出毒草、「ジギタリスの葉」登場。
(子ども時代のわたしは、クリスティー作品で「ジギタリス」という名前を覚えました 笑)
犯行の動機は、気持ち悪すぎるけれど、ミス・マープルもいう通り、現実にもよく見聞きするリアルなものでした。
本筋とは関係ありませんが、
なぜ唐突に「カール氏の下着」問題が? 笑
第12話「バンガロー事件」(“The Affair at the Bungalow”)
脚本家を目指す青年が、ある女優を名乗る人物からバンガローに呼び出されたあげく――。
変な話だなあ、と思っていたら、思わぬ展開に 笑
語られた謎も手の込んだ仕掛けで、語られ方もアレだったせいで頭がこんがらがったというか興味深かったものの、
作中リアルタイムで進行している出来事の方が、生々しくてずっと面白い。
ミス・マープルたちのちょっとしたシスターフッドも味わえるお話。
第13話「溺死」(“Death by Drowing”)
セント・メアリー・ミード村で、未婚の娘が妊娠して父親に責められ、川で水死する事件が。
ちょうどバントリー大佐の家に滞在していた、火曜クラブメンバーで前警視総監のサー・ヘンリー・クリザリングのもとへ、ミス・マープルが現れ、これは自殺ではなく殺人で犯人もわかっているといいますが、証拠はありません。
ミス・マープルの推理力に一目置くサー・ヘンリーは、彼女の提示した犯人が本当に殺人を犯したのか、警察の捜査に同行して調べることに――。
なんとなく雰囲気で犯人がわかってしまいましたが 笑 、途中でミス・マープルが気づくあることが、真相に辿り着くカギとなります。
(でもその手がかりは、読者には気づきようがないやつ 笑)
それにしても、
ミス・マープルがサー・ヘンリーに、犯人が(直感的に)わかった理由を説明する際の、
「それというのも、ピーズグッドといって、何年か前にわたしの姪のところに車を引いて野菜を売りに来ていた男が、ある日、ニンジンのかわりにカブを置いていったことがあるからだと申しあげたら、あなたはどうお思いになりますか?」
というセリフの、意味がわかりません。
気になる~!
「火曜クラブ」こんな方におすすめ
- ミス・マープルの初登場作品に興味がある方
- 安楽椅子探偵ものに興味がある方
- さくっと読める短編ミステリーを読みたい気分の方
おまけ:短編に特におすすめ! 目にもお財布にも優しい、隙間時間を活かせる読書とは?
短編集『火曜クラブ』が面白いのはわかった!
でも、
時間とお金がないんだー!
ドライアイならあるんだー!
……という皆様へ。
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まずはお気軽に、リンク先の説明へどうぞ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
みなさま、どうぞ楽しい物語体験を ♪
☆この記事では以下のサイトを参考にしました。
○管理人N・M卿様による
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