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「葬儀を終えて」アガサ・クリスティー:つかみがヤバい!ミステリーファンほど騙されそうな、よきエンタメ

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 アバネシー家の当主リチャードの葬儀のあと、はみ出し者の末妹コーラは無邪気にいった。

「だって彼は殺されたんでしょ?」

 翌日、斧で頭を砕かれた彼女の死体が発見される。

 資産家だったリチャードの死因は病気ではなく、コーラは口封じのために殺されたのか?

 遺言執行人の依頼で、ポワロが事件を調べ始めるが――。

 原題は“After the Funeral”、1953年発表。
 
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■目次■
 

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「葬儀を終えて」あらすじと主な登場人物

「葬儀を終えて」あらすじ

 秋のはじめのイングランド北部。
 
 広大なゴシック様式の屋敷エンダビー・ホールでは、アバネシー家の当主リチャードの葬儀を終えて、遺族と故人の遺言執行人の弁護士が、昼食のテーブルを囲んでいました。
 
 美味しい食事やワインが振る舞われたあと、書斎でリチャードの遺言の内容が発表されます。
 
 遺族たちがリチャードの急死について語り合う中で、久しぶりに一族の前に姿を現した末の妹コーラから、
 
「だって彼は殺されたんでしょ?」
 
 という爆弾発言が飛び出します。

 驚いた一同に問い詰められ、あたふたと発言を取り消すコーラ。
 
「まあ、ごめんなさい(中略)わたしったら、なんて馬鹿なの。でも、リチャードがあんなこと言ったから、そう思ったの(中略)わたしって、言っちゃいけないことばかり言っちゃうのよね、わかってる」
 
 昔から情緒不安定ではみ出し者だった彼女の言葉は、なかったものとされ、遺族はそれぞれの家に戻りました。
 
 翌日の夕方、遺言執行人のエントウィッスルのもとに、頭を斧で砕かれたコーラの死体が発見されたという知らせが届きます。
 
 あのコーラの言葉は、真実だったのか。
 
 病死とされたリチャードは実際には殺されていて、生前彼からなにか聞いていたコーラは、口封じのために殺されたのか。
 
 ふたりの死で利益を得る遺族たちは、揃って金を必要としている上、コーラの事件の際のアリバイもありません。
 
 事態を重くみたエントウィッスルは、友人のポワロに事件の調査を依頼します。

「葬儀を終えて」主な登場人物

アバネシー家 ※リチャードの6人の弟妹の記載は年齢順

(1)リチャード(故人)

 アバネシー家の当主。

 妻子に先立たれ、エンダビー・ホールで使用人たちと暮らしていた。

 息子のモティマーが半年前にポリオで急死したあと、甥姪の中から財産と事業の後継者を探していたらしい。

 もともと重病だったが、医師の予想より早く68歳で急死した。

 

(2)レオ(故人・リチャードの弟)

(2)ー1)ヘレン(レオの妻)

 夫の死後もエンダビー・ホールを訪れるなど、一族と交流を続けている。

 皆に好かれ頼られている、灰色の髪に青い目の有能な50代美女。

 

(3)ローラ(故人・リチャードの妹)

(3)―1)ジョージ(ローラの息子)

 事務弁護士事務所に勤めている。

 ハンサムだがずるそう。

 

(4)ティモシー(リチャードの弟)

 絶えず体調不良を訴え、働かず横柄な態度で部屋にこもっているが、実は健康。

 リチャードの死後は、兄にかわって権力をふるうつもりだった。

(4)ー1)モード(ティモシーの妻)

 夫の世話を焼き、家事も車の修理もこなす、大柄でたくましい女性。

 

(5)ゴードン(故人・リチャードの弟)

(5)ー1)スーザン(ゴードンの娘)

 甥・姪の中で唯一、伯父のリチャードに似ていて、エネルギッシュで有能。

 新婚の夫を愛しているが、一族からは結婚を反対されていた。

 黒髪で、ほぼ金色に見えるはしばみ色の瞳、色っぽい口元の、セクシーな女性。

(5)ー2)グレゴリー(スーザンの夫)

 不安定な言動が目立つ、青白い顔と茶色い髪の薬剤師助手。

 妻の一族からスーザンにふさわしくないと思われている。

 

(6)ジェラルディン (故人・ リチャードの妹)

(6)ー1)ロザムンド(ジェラルディンの娘)

 かわいらしい美女。

 大根役者で、まわりには頭が悪いと思われている。

(6)ー2)マイケル(ロザムンドの夫)

 ワイルドな魅力の、ブロンドのイケメン俳優。

 

(7)コーラ(きょうだいの末の妹)

 画家でフランス人のハーフだった夫との結婚を反対されて駆け落ちし、以来25年間、一族と疎遠になっていた。

 生活力がなく、長兄のリチャードから長年金銭の支援を受けている。

 子どもの頃から、他人の秘密を大勢の前で指摘することがあった。

 夫に先立たれ、バークシャーの芸術家村で絵を買い集めながら暮らしている。

 背が高く太った49歳。

それ以外の人物

1.ランズコム

 アバネシー家の90歳になる忠実な執事。

 エンダビー・ホールの番小屋で隠居する予定だったが、当主リチャードの死後、継ぐ者のない屋敷を売却することになり、隠居先を失う。

 

2.エントウィッスル

 実務から引退した72歳の弁護士で、老舗法律事務所のシニア・パートナー。

 リチャードの古い友人であり遺言執行人で、アバネシー家とは長年つきあいがある。

 リチャードとコーラの死について、ポワロに調査を依頼する。

 

3.ミス・ギルクリスト

 夫に先立たれたコーラと同居して軽い家事をしていた、50がらみの上品な家政婦。

 コーラの死後、スーザンの仲介でティモシーとモード夫妻に雇われる。

 

4.エルキュール・ポワロ

 ベルギー人の名探偵で元刑事。

 老齢だが、友人であるエントウィッスルの話に興味をひかれ、調査依頼を受ける。

「葬儀を終えて」感想

長いけど、中だるみなくずっと面白い、エンタメ傑作!

コージーからサスペンスにスイッチする、あの一言/映画化・ドラマ化も

 みんな大好き、イギリスの由緒ある広大なお屋敷

 細々した仕事をしながら一家の来し方に思いをはせる、ベテラン執事の姿から物語はスタートします。

 

 ほー。

 50年代イギリスのお金持ちの、お葬式のあとの食事って、こんな感じだったのねー。

 なんて思いながらのんびり読める、コージーな幕開けです。

 

 けれど、そこであのセリフ、

 

「だって彼は殺されたんでしょ?」

(p29)

 

 が炸裂。

 物語は、一気にサスペンスモードに。

 

 実はこれ、巻末の折原一の解説によれば、この作品が発表された1953年には、既に「古臭い手法」 (笑)となっていた、非常に本格っぽいシーンなのだとか。

 

 そうはいっても、誰でも気になっちゃいますよねー、

 あの状況で、あのあざといセリフ! 笑

 

 つかみ「すごい」というより「ヤバい」 笑 こちらの作品、まんまと読者のハートをわし掴んだ結果、映画化・ドラマ化もされています。

 

キャラを覚えるまでは、家系図ページと共に(笑)

 亡くなったリチャードの弟妹は6人もいて、すでに亡くなっている場合は、その連れ合いか子どもが登場。

 

 というわけで、なかなかキャラが多く、慣れるまでは家系図頼りで読み進めました 笑

 

(ハヤカワ文庫のいつもの「登場人物」に加えて、本作は献辞の次のページに、わかりやすい家系図がついています)

 

 そのため、

  • キャラが多い小説が苦手
  • カタカナ名前が苦手
  • ていうか、自分のリアルの親戚関係すらうろ覚えそれはうちの夫 笑

 という方には、とっつきにくい作品かもしれません。

 

 ただ、人が多いとはいえ、

 

  • 親戚同士の関係は、おじ・おば甥・姪、プラスそのパートナーだけで、意外とシンプル
  • キャラもわかりやすく書き分けられている

(ベテラン作家クリスティーの腕ですね~)

 

 ので、それほど長くかからずに頭に入ると思います。

エンタメに振り切った傑作!

 第二次世界大戦の影響や女性差別などの社会状況を背景にしているものの、基本的にはどきどきハラハラ気楽に読める、ザ・エンタメ作品です。

 

 長いけど、中だるみなく最後まで面白かった!

 

 ミステリー好きほど騙されそうなところも、いい!

 

 少しでも興味のある方は、ぜひとも家系図ページを見ながら読んでいただきたい傑作です 笑

大胆すぎる(?)あのトリックと、あの動機/ちょびっと気になるミステリーのルール問題

あのトリック!

 本作を読んだ方ならおそらく、誰もが一度は考えたと思うのですが、

 

大胆すぎん?
犯人の、あのフェイク 笑

 

 意外とバレないもの……なのか? 笑笑

 

 

 まあ、面白いから、全然いいんですけどね! 笑

(ええんかーい)

 

 ていうかむしろ、こういうの、

 本格ミステリーあるあるかもしれませんけどね! 笑笑

 

 

さすがにバレそうなフェイクといえば思い出す作品たち

 

 

 

 \さすがに……/

 

 \こちらはハードボイルド/

 

 \これはバレずにいけるかも/

動機と、ちょっとだけ気になるあの問題

 犯行動機については、納得というか、

 あのジャンルわたしも好きなので、理解してしま、いやいや、殺人ダメ絶対。

 

 とはいえ、

 もしもあんなことが起きたら、興奮しますよね……!

(想像しただけで、猛烈にどきどき 笑)

 

 なのに、そこでコーラがあの調子だったら、

 わたしだって余裕でキレたと思う。

 たとえ理不尽でも 笑

 

 とはいえ、犯人におかれましては、もうちょっと、こう、

 規模の小さい犯行にはできなかったものかと…… 笑

 

(ネタバレ防止にふわっと書いております)

 

 ついでにいうと、

 この作品のある要素って、ミステリーのルールといわれるアレに抵触する気がしますが、どうなんでしょうねー。

 

(個人的には、スルーでよくない? と、安直に思っています 笑)

謎の名言出ました

「女性に親切心はありません」

「やさしいときはありますがね」

(p133)

 

 ポワロ、過去になんかあったの? 笑

過去の事件に言及するポワロ:「エッジウェア卿の死」未読の方はご注意を

 中盤(p223)、ポワロがクセつよ凄腕情報屋・ゴビーとの会話で、「エッジウェア卿の殺害事件」について言及するシーンがあります。

 

エッジウェア卿の死』ファンの方はお楽しみに ♪

 

 同作のネタバレ要素を一切封じたい方は、以下のセリフが始まったら、薄目でスキップをおすすめします。

 

「(前略)エッジウェア卿の殺害事件がありましてね。忘れもしない。危うく負けるところだった。ええ、このエルキュール・ポアロがね。何も考えない頭から生まれる単純きわまりないずるさに負けそうになりました。ごく単純な頭脳の持ち主は、往々にして単純な犯罪をやってのけ、あとはほったらかしにしておくのです。あれも特殊な才能なのかもしれない。(後略)」

 

 

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妄想とゆで卵の話

 71ページから72ページにかけて出てくる、「毒殺されるという妄想でゆで卵しか食べなくなった老人」の話。

 

 あれって、クリスティーの祖母のエピソード使ってますよねー。

 

(天国のおばあちゃんも、孫娘の小説に使われるならよしとされたのでは 笑)

(しらんけど)

ほのぼの・しんみりからの、考えさせられる幕切れ

 ラスト直前に明かされる、

 あの有名作品のエンディングパターン、しかも×2

 

 めでたーい✨

 

(ネタバレ防止にふんわりと)

 

 片方のケースは、ちょっとしんみりというか、現代にも通じるものがありますが、

 それはそれとして、

 どちらもほのぼのする希望のあるエピソードです

 

 そっかー、よかったねー。

 ……と、ほっこりな読後感で終わるかと思いきや。

 

 最後の最後に、

 ヤバい殺人事件のあとにふさわしい、少々考えさせられる会話で物語は幕を閉じます。

 

「世の中にはいろいろな人間がいます」(p424)

 

 ですよねー……。

こんな方におすすめ

  • 本格ミステリーが好きなすべての方

 

  • あざといとは思いつつ、あのコーラのセリフが気になってしまった方

 

  • クリスティーのファン、特に、ポワロシリーズのファン

 

 

 

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 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 みなさま、どうぞ楽しい物語体験を ♪

 

 

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