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「無実はさいなむ」アガサ・クリスティー:作者の自選ベスト10・好みの分かれるサスペンス/マープル作品にリメイクしてドラマ化も

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 資産家の老婦人レイチェル・アージルが自宅で殺された。

 屋敷内の者による犯行が疑われる中、養子のひとりで素行の悪いジャッコが逮捕され、獄中で病死する。

 2年後、ジャッコのアリバイが証明された。

 ふたたび容疑者となった遺族たちが疑心暗鬼に陥る中、新たな事件が――。

 原題は“Ordeal by Innocence”、1958年発表。
 
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「無実はさいなむ」あらすじ

 冒頭、南極探検からイギリスに戻ったばかりのアーサー・キャルガリが、へんぴな場所にあるアージル家の屋敷を訪れます。
 
 2年前、この屋敷で、女主人のレイチェルが何者かにより撲殺され、現金が奪われる事件がありました。
 
 屋敷の内部の者による犯行が疑われる中、レイチェルと夫のリオが育てた5人の養子のひとりで、素行の悪いジャッコが逮捕されます。
 
 奪われたレイチェルの金を持っていたジャッコは、死亡推定時刻に自分にはアリバイがあると主張しましたが、それを証明する人が現れず、有罪となり半年後に獄中で病死しました。
 
 実はキャルガリは、ジャッコのアリバイを証明できる唯一の人物でしたが、事情により事件の報道に気づかず、南極から帰国して初めて、自分の証言がなかったせいでジャッコが有罪とされたことを知ったのでした。
 
 ジャッコの名誉を回復しようと、屋敷を訪れ、亡くなったジャッコは冤罪だったと告げるキャルガリ。

 ところが予想に反して屋敷の皆は喜ばず、それどころか、再び容疑者となって互いに疑心暗鬼に陥ります。
 
 独善的だったレイチェルとの記憶を各自が辿る中、新たな事件が起きて――。

「無実はさいなむ」感想

クリスティーの自選ベスト10入り! 好き嫌いの分かれる、心理描写重視のサスペンス

 巻末のミステリ書評家・濱中利信の解説「愛すべき失敗作」によれば、この作品は

 

「人間なら誰でもが持つ、不確かで邪悪で弱い、心の奥底にある隠れた部分を巧みに」

 

 描いたサスペンス。

 

 作者クリスティーの自選作品ベスト10入り(※次項で説明します)しているものの、

 かなーり

 

好き嫌いの分かれる作品
 
だと思います 笑

 

 ミステリーではありますが、

 謎を追う前に、とにかく関係者の心情を語る作品。

 

 クリスティー得意の

 

 権力を握り独善的な母/妻

  VS

 夫・子ども・周囲の人間たち

 

 の物語なんですよね。

 

 ただし、メアリ・ウェストマコット名義で発表された一連の作品に比べると、掘り下げは浅めです。

 

 \こっちはがっつり/

 

 養子の中には、

「養母は確かにアレだったけど、反抗期の自分の態度もよくなかったよなー」

 と反省している人も。

 

 被害者のレイチェルは、独善的ながら暴君というほどではなかった印象です。

 

 \こっちはガチの暴君!/

※クリスティーの自選作品ベスト10とは

 クリスティーは1972年に、日本のクリスティーファンクラブへの手紙で、自選作品ベスト10を発表しています。

 

(もちろん、そのあと発表された作品は含まれていません)

 

 本作以外の9作は、以下の通り。

 

  • ミステリーファンを騒がせた有名作品
  • 作者のテクニックを駆使して、登場人物たちの心理を掘り下げた読ませる作品

 

 の、両方が含まれていますねー。

 

(1)『そして誰もいなくなった

 

(2)『アクロイド殺し

 

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(3)『オリエント急行の殺人

 

(4)『予告殺人』

 

(5)『火曜クラブ

 

(6)『ゼロ時間へ』

 

(7)『終りなき夜に生れつく』

 

(8)『ねじれた家』

 

(9)『動く指』

ミステリーとしてはバランスが/鮮やかな真相

  • 罪悪感というものを知らず、
  • 素行が悪く、
  • 決してイケメンではないけれど、口のうまさでモテる年上キラー

 という、家族の厄介ものだったジャッコ。

 

 彼が養母を手にかけていなかったことが明らかになり、警察は過去の事件を再捜査することになります。

 

 ジャッコへの罪悪感を抱えたキャルガリも探偵役となりますが、ポワロやミス・マープルなど他のクリスティー作品の探偵に比べると、あまり調査の描写はありません。

 

 ちょっと辛かったのが、キャラたちの思い悩むシーンが延々と続いて、ミステリーなのに

 過去の殺人事件が説明されるまでが、とにかく長いこと!

 

 名作という評価を知らなかったら、途中でくじけてたかも 笑

 

 ようやく事件の話が始まってからも、進行はスロー。

 終盤で急にハイペースになります。

 

 ただし、真相の破壊力はすごいんですよね。

 

 腹オチ感はあるし、

 冤罪にまつわるモヤモヤもうまく処理されてるし、

 意外な伏線もきっちり効いてるし。

 

 さすがミステリの女王、うまいわー。

 

 犯人に共感する読者も多そうです。

 

 あの人もねー、

 心の隙間を突かれただけじゃなくて、戦争とか、いろいろ事情があったんだよねー、

 みたいな。

 

 事件直後の犯人の気持ちとかもう、 

 辛すぎるもん。

 

 あれ読んで同情しないヤツいる?

 いねーよなあ!?

 

(おっと、わたしの心のマイキーがダダ漏れに)

 

 

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ラストには物申したい

 解説にも書かれていましたが、

 ラストのそっけなさには、ちょっと不満が。

 

 あれー?

 もしかして、ページ数足りなくなっちゃったのかな?

 ってレベルですよこれ! 笑

 

 ただ、わたしは解説とは違って、それまでの文脈からあの結末には納得しています。

 

(とはいえ、せめてあと1ページくらい会話してからにして! とは思った 笑)

 

ついでにいうと、途中で「この人消されそう」ってフラグが立った、とあるキャラの扱いが、クリスティーにしては雑な気が。さすがにペースが遅すぎると気づいて読者サービスを? 笑

 

 あと、本筋とは関係ないっていうか、作品はもう終わってるんだからどうでもいいんだけど、どうしても気になること

 

 あのふたりは、ひと足先に出ていったあの人を、

 ちゃんと最後まで追いかけなくていいのだろうか?

 

 あの人こそ崖から飛び降りちゃったりしてないか、どうにも心配で夜しか眠れません

映画化とドラマ化:ミス・マープル作品へのリメイクや、BBCでの大幅改変

 本作は「ドーバー海峡殺人事件」の邦題で、1984年に映画化されています。

(主演はドナルド・サザーランド)

 

 2007年には、ミス・マープル作品にリメイクされテレビドラマに。

 

 2018年には、BBCでドラマ化されました。

 原作から大幅に内容を変え、話題になったそうです。

「無実はさいなむ」こんな方におすすめ

念のため、本作をおすすめできない方はこちら

 登場人物たちの心理にはあまり興味がなく、

 キャラ同士の意味深セリフやら心理描写やらが続くと、

 

「そーゆーのいいから、早く事件の話を!

で、犯人は?!

 

 とキレそうになる方には、

 残念ながら本作はおすすめできません。

 

 くれぐれもご注意ください 笑

気を取り直して、こんな方におすすめです

  • クリスティーの自選ベスト10作品が読みたい方

 

  • 心理描写重視のミステリー、特にサスペンスが好きな方

 

  • 本作の映画化・ドラマ化作品を観て、原作が読みたくなった方

 

 

 

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 みなさま、どうぞ楽しい物語体験を ♪

 

 

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