屋敷内の者による犯行が疑われる中、養子のひとりで素行の悪いジャッコが逮捕され、獄中で病死する。
2年後、ジャッコのアリバイが証明された。
ふたたび容疑者となった遺族たちが疑心暗鬼に陥る中、新たな事件が――。
原題は“Ordeal by Innocence”、1958年発表。

「無実はさいなむ」あらすじ
ところが予想に反して屋敷の皆は喜ばず、それどころか、再び容疑者となって互いに疑心暗鬼に陥ります。
「無実はさいなむ」感想
クリスティーの自選ベスト10入り! 好き嫌いの分かれる、心理描写重視のサスペンス
巻末のミステリ書評家・濱中利信の解説「愛すべき失敗作」によれば、この作品は
「人間なら誰でもが持つ、不確かで邪悪で弱い、心の奥底にある隠れた部分を巧みに」
描いたサスペンス。
作者クリスティーの自選作品ベスト10入り(※次項で説明します)しているものの、
かなーり
ミステリーではありますが、
謎を追う前に、とにかく関係者の心情を語る作品。
クリスティー得意の
権力を握り独善的な母/妻
VS
夫・子ども・周囲の人間たち
の物語なんですよね。
ただし、メアリ・ウェストマコット名義で発表された一連の作品に比べると、掘り下げは浅めです。
\こっちはがっつり/
養子の中には、
「養母は確かにアレだったけど、反抗期の自分の態度もよくなかったよなー」
と反省している人も。
被害者のレイチェルは、独善的ながら暴君というほどではなかった印象です。
\こっちはガチの暴君!/
※クリスティーの自選作品ベスト10とは
クリスティーは1972年に、日本のクリスティーファンクラブへの手紙で、自選作品ベスト10を発表しています。
(もちろん、そのあと発表された作品は含まれていません)
本作以外の9作は、以下の通り。
- ミステリーファンを騒がせた有名作品
- 作者のテクニックを駆使して、登場人物たちの心理を掘り下げた読ませる作品
の、両方が含まれていますねー。
(1)『そして誰もいなくなった』
(2)『アクロイド殺し』
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こちらも『アクロイド殺し』キーホルダー付きです。
(3)『オリエント急行の殺人』
(4)『予告殺人』
(5)『火曜クラブ』
(6)『ゼロ時間へ』
(7)『終りなき夜に生れつく』
(8)『ねじれた家』
(9)『動く指』
ミステリーとしてはバランスが/鮮やかな真相
- 罪悪感というものを知らず、
- 素行が悪く、
- 決してイケメンではないけれど、口のうまさでモテる年上キラー
という、家族の厄介ものだったジャッコ。
彼が養母を手にかけていなかったことが明らかになり、警察は過去の事件を再捜査することになります。
ジャッコへの罪悪感を抱えたキャルガリも探偵役となりますが、ポワロやミス・マープルなど他のクリスティー作品の探偵に比べると、あまり調査の描写はありません。
ちょっと辛かったのが、キャラたちの思い悩むシーンが延々と続いて、ミステリーなのに
過去の殺人事件が説明されるまでが、とにかく長いこと!
名作という評価を知らなかったら、途中でくじけてたかも 笑
ようやく事件の話が始まってからも、進行はスロー。
終盤で急にハイペースになります。
ただし、真相の破壊力はすごいんですよね。
腹オチ感はあるし、
冤罪にまつわるモヤモヤもうまく処理されてるし、
意外な伏線もきっちり効いてるし。
さすがミステリの女王、うまいわー。
犯人に共感する読者も多そうです。
あの人もねー、
心の隙間を突かれただけじゃなくて、戦争とか、いろいろ事情があったんだよねー、
みたいな。
事件直後の犯人の気持ちとかもう、
あれ読んで同情しないヤツいる?
いねーよなあ!?
(おっと、わたしの心のマイキーがダダ漏れに)
ラストには物申したい
解説にも書かれていましたが、
ラストのそっけなさには、ちょっと不満が。
あれー?
もしかして、ページ数足りなくなっちゃったのかな?
ってレベルですよこれ! 笑
ただ、わたしは解説とは違って、それまでの文脈からあの結末には納得しています。
(とはいえ、せめてあと1ページくらい会話してからにして! とは思った 笑)
(ついでにいうと、途中で「この人消されそう」ってフラグが立った、とあるキャラの扱いが、クリスティーにしては雑な気が。さすがにペースが遅すぎると気づいて読者サービスを? 笑)
あと、本筋とは関係ないっていうか、作品はもう終わってるんだからどうでもいいんだけど、どうしても気になること。
あのふたりは、ひと足先に出ていったあの人を、
ちゃんと最後まで追いかけなくていいのだろうか?
あの人こそ崖から飛び降りちゃったりしてないか、どうにも心配で夜しか眠れません。
映画化とドラマ化:ミス・マープル作品へのリメイクや、BBCでの大幅改変
本作は「ドーバー海峡殺人事件」の邦題で、1984年に映画化されています。
(主演はドナルド・サザーランド)
2007年には、ミス・マープル作品にリメイクされテレビドラマに。
2018年には、BBCでドラマ化されました。
原作から大幅に内容を変え、話題になったそうです。
「無実はさいなむ」こんな方におすすめ
念のため、本作をおすすめできない方はこちら
登場人物たちの心理にはあまり興味がなく、
キャラ同士の意味深セリフやら心理描写やらが続くと、
「そーゆーのいいから、早く事件の話を!」
「で、犯人は?!」
とキレそうになる方には、
残念ながら本作はおすすめできません。
くれぐれもご注意ください 笑
気を取り直して、こんな方におすすめです
- クリスティーの自選ベスト10作品が読みたい方
- 心理描写重視のミステリー、特にサスペンスが好きな方
- 本作の映画化・ドラマ化作品を観て、原作が読みたくなった方
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
みなさま、どうぞ楽しい物語体験を ♪
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